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1話

孫呉に張飛あり。

張飛が呂蒙子明と呂布奉先を招き入れた。

俺は呂布奉先という名で張飛に呼ばれた。

「俺やお前と違った感じでカッコいい異名だよ」

「確かに俺たちとは違うな」

「それと孫策がいつ頃来るとかの情報も入ってくる」

「今の孫策は相当、有名になっているみたいだな」

「まあ、そんなのはどうでもいいよ。とにかく関羽がお前に会いたがっているらしいんだ」

「ああ、俺も劉備に会わねばならないと思っている所だったんだ」

「それは良かった。一緒に行くか?」

俺たちは黄河を渡る事になる。

孫策がその船で一緒にやって来た。

俺たちは橋で渡り終えると船に乗り込んだ。

そして、俺は呂布奉先として、関羽に挨拶に行った。

関羽は頭を下げた。

「お前が呂布奉先か」

「ええ、よろしくお願いします」

「実は、お前に相談がある」

「何か?」

「ワシはこれから成都を目指し劉備に会うのだが、お前はどうされる?」

俺は呂布奉先なので、そう答える事にした。

「私は曹操に会いに行き、この剣を渡そうと思います」

呂布奉先の剣を見せた。

関羽が頷いた。

「なるほど」

呂布奉先の事を知っているので納得したようだ。

そこで孫策が割って入る。

「俺が聞いた所によると、劉備が曹操に会いに行くらしい」

「そうなんですか?」

俺は劉備の顔を見た。

「そうじゃな、曹操は大層、強いと聞いているし、三国志最強の男とも聞いている。会う価値はあるかもしれんの」

「俺たちも付いて行くつもりだ」

孫策が言った。

「俺たちは今、義勇兵を集めているんだ。付いて来たいと思う奴がいれば連れてきても構わないぜ」

そう言うと孫策は帰って行った。

呂布奉先が劉備に言う。

「私も曹操に会えるのであれば会っておくべきだと思います。おそらく戦いになるでしょう」

「そうじゃろうの、ワシも孫策と戦って勝てる自信がない。それに曹操ほどの人物ともなれば、ワシらでは太刀打ちできぬやもしれぬ」

「私も正直、勝てる自信はありませんね。しかし、私は呂布奉先として呼ばれているのに逃げてばかりはいられない」

「本当に呂布奉先なのか?」

関羽は不思議そうに俺の顔を見る。

俺は頷く。

「信じて貰えないかもしれませんが、実は三国志の知識があるのです」

関羽が頷いた。

「三国志?」

「はい。この今の時代を三国志の時代というらしいのです。私は呂布奉先としてこの時代に生まれというか転生ですねしました」

「転生?」

「まあ、何というか」

呂布奉先の事を考えるとあまり詳しく話してはいけない気がした。

だから、途中で説明を諦めた。

「ふむ、だがお主の容貌はまさに呂布奉先と同じじゃな」

「そうですか?」

関羽が頷く。

「うむ、ワシもそう思う」

そこへ劉備がやってきた。

「なんの話をしておるのだ?」

関羽が答える。

「それがな……むごっ」

俺は関羽の口を押えた。

「その事はあまり人には話さない方がいい気がするのです」

劉備が不思議そうな顔をした。

「そうなのか?」

俺は頷く。

劉備たちが見ている前で、俺が関羽に掴みかかろうとしたら黄蓋が止めに入った。

「おいおいおい、大将さんよ。落ち着いてくれよ」

すると赤壁から孫策は弓を取りだし射る素振りをした。

そして叫ぶ。

「呂布奉先を暗殺しようとした疑いでこの場で打ち首にする」

皆が目を丸くして、劉備の方を見る。

関羽は青ざめる。

「ど、どういう事だ?」

関羽が言うと黄蓋も言う。

「どういう事なんだ?関羽よ」

他の者たちも騒ぎ出す。

孫策が剣を抜き近づいてくると関羽は手を付いて謝る。

「すまぬ、ちょっとした冗談じゃ、ワシも酔っておったのじゃ」

関羽がそう言っても誰も信じてはいなかった。

黄蓋が俺を睨んだ。

「お前はなんて事をするんじゃ?」

劉備と俺が説明を始める。

「孫策に頼まれて暗殺をしようとしたところを私が止めたのですよ」

皆が納得した。そして、孫策は悪ふざけで済まなそうな感じであったので呂布奉先は何も言わない事にした。

しかし、心の中では複雑なものがあった。

(何が三国志じゃ。全然、違うじゃないか。人を無駄に殺しやがって)

「劉備には曹操から贈られた大切な剣があったのではないのか?」

「ああ、じゃが、盗まれてしまってな」

「それなら仕方がないな。それにしても……むごっ」

今度は呂布奉先の口を関羽が塞いで止めた。

そして、二人で離れた場所に来ると呂布奉先が怒ったようにいう。

「いい加減にして欲しいですよ!私はこんな冗談をするために来た訳ではないのです」

しかし関羽も声を荒げた。

「それはこっちのセリフじゃ!ワシを馬鹿にするのもいい加減にしろ」

呂布奉先も言う。

「あなたは劉備が狙われている事に気が付かなかったのですか?」

「何を言っておる、奴らが呂布奉先を暗殺しようとしていたのは本当だし、ここで実際に起こった事じゃぞ」

関羽の言葉に呂布奉先は溜息をつくと首を横に振る。

「おそらく嘘でしょう。あれは本当は自分たちではなく、俺たちに暗殺の濡れ衣を着せようとしていたんですよ。あの孫策の態度に気を付けた方がいいですね」

呂布奉先はそれだけ言うと関羽から離れて行った。

その態度に腹を立てながらも関羽も怒る気になれなかった。

「ああ、そうかもしれんな」

そして、そのままその日は別れた。

だが呂布奉先と劉備の間には大きな溝が出来たのは言うまでもない事だった。

次に張飛がやって来る。

俺は孫策より張飛の方が気性が荒いと言うので気になっていた。

しかし、何の問題もなく普通に挨拶できた。

「徐州での事、聞いたよ」

「ああ、呂布奉先に討たれた人たちですね」

「そうだ、あれからお前の事を調べてみたんだ」

「そうですか?」

俺はあまり詳しく調べられるのも困るなと思っていた。

呂布奉先の中に俺がいると気が付かれたらどう思われるか不安だ。張飛は一通り話すと関羽から頼まれた事を言い出した。

「悪いが、俺は兄者の代わりに曹操のところに行き劉備軍に合流する事になった」

呂布奉先はそれを聞いて少し寂しく思った。

まあ、今までずっと一緒にいたので当然だが、ここまで共に行動した者たちと離れるのも寂しいものである。

張飛は俺の気持ちを察したのか言う。

「お前も一緒に行くか?」

俺は慌てて首を振る。

「それは困りますよ……私の剣を見て、曹操はもしかしたら呂布奉先だと気が付くかもしれません。そうなれば戦わなくてはならなくなるかもしれません」

「そうだな、じゃあ俺は行くとしよう」

そう言って張飛は去った。

関羽と共に行動できないのが残念ではあったが仕方がない事だと思った。

最後にやって来たのは馬超である。

彼もまた問題がなく挨拶してきた。孫堅から頼まれた話を関羽の代わりに持ってきたのである。

「劉備軍へ行かれるのですか?」

俺がそう聞くと馬超は頷く。

「ああ、俺の軍が多すぎたからな、今回の事がなくても曹操と戦う可能性が高いかもしれないだろう?だから少し整理する事にしたんだ」

「そうですか」

俺は少し寂しい気持ちになっていたが仕方ない事だと思って頷いた。

「関羽なら最後まで劉備を守り抜こうとしたかもしれないが、俺はまだそこまでの力はない。だが俺なりに出来る事はするつもりだからな」

「分かりました」

馬超が去った後、俺は関羽の所へ向かう。

関羽がいるので黄蓋や周倉も一緒だ。

俺は頭を下げて、今まで世話してもらったお礼を述べた。

「色々あって、大変でしたね」

俺が言うと関羽は頷く。

「まったくじゃ」

すると黄蓋が言う。

「劉備軍に行けば俺たちのような年寄りとは別れた方がよろしいかと」

俺も同感であったので同意するように頷いた。

「そうですよね、私もそう思いますよ」

「それで、呂布殿たちはこれからどうされる?」

俺は少し考えたが、呂布奉先らしく答える事にした。

「そうですね……私たちにはまだまだやるべき事があるので暫くはこのまま各地を転戦していきたいと思います」

その言葉に関羽と黄蓋や周倉、さらには他の兵士たちまで拍手する。

「さすがは我が将軍ですな」

他の者たちが言う言葉に苦笑しながら俺はその場を去った。

劉備に関羽からの伝言を伝えた後、劉備と別れた。

呂布奉先は関羽の代わりに曹操の所に行く事にした。

「くれぐれも、曹操には気を付けてな」

俺がそう言うと関羽は頷いて答えた。

「分かった」

呂布奉先は陳宮に別れの言葉を告げた。

「今までありがとう。これからも頑張りなさい」

それだけ言うと陳宮は感極まって泣き出した。

「俺こそありがとうございました」

呂布奉先は陳宮と別れるとそのまま曹操の所へと向かった。

道中は実に順調であった。

特に戦いもないので楽々と進んでいる。

おそらく劉備軍は孫策が率いて、俺たちと戦い、そして曹操にやられるだろう。

その結果、恐らく曹操軍に吸収でもされるに違いない。

そう考えれば劉備軍の関係者と俺が関わる事もなくなる。

(だけど、悪い連中じゃないんだよな)

そんな事を考えているうちに数日で曹操軍がいるという許昌まで来た。

まず、曹操軍にいる劉備と親しい武将に挨拶に行った。

許昌では諸葛亮が俺を出迎えてくれた。

諸葛亮は年若いが聡明で俺と気が合った。

「呂布奉先殿、よくぞ参られた」

諸葛亮は俺の手を握って嬉しそうにそう話す。

「黄巾党との戦いの活躍を耳にしているよ」

俺は頷いて答えた。

「黄巾党は意外に手強かったです」

実際には戦ったのは呂布奉先だが、関羽と張飛が共に戦っても倒せなかった黄巾党なのだ。

それを考えれば今の呂布奉先は手強いだろう。

諸葛亮は少し目を細めると俺の顔をまじまじと見る。

「どうしたのですか?」

俺が訊くと諸葛亮は答えた。

「ああ、いえ何も……所で呂布殿に頼みがあるのです」


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