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桜と星と初こいと《BL》  作者: 茶野森かのこ


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桜と星と初こいと57


「咲良!本当に頼むよ!(まき)ちゃん流されやすいんだから!」


そんな中、咲良(さくら)が不貞腐れているのも構わず、恋矢(れんや)は思い出したように咲良に詰め寄るので、龍貴(たつき)も顔色を変えてその後に続いた。


「そこも可愛いんすけど、海外じゃ何があるか分からないっすから!命と貞操だけは何としても頼みますよ!」


その思いのこもった発言に、詰め寄られた咲良ではなく、槙が顔を真っ赤にして、二人を咲良の前から押し返した。


「お前らな!人を何だと思ってんだよ!大丈夫だって!向こうに行ったって、俺が咲良君のマネジメントするつもりなんだから!」

「…最初は、ホテルのチェックインくらいで十分だよ、飯の調達とかさ。仕事は今までも俺が管理してたし」

「え…」


言いづらそうな咲良の言葉に、槙が思わず言葉を失えば、事情を知っている恋矢は堪えきれず吹き出した。


「おい!笑うな、そこ!俺だって未だにへこんでるんだからな!ちゃんと反省して、頑張ろうとしてるのに…!」


ここ数ヶ月、まだ慣れない咲良の仕事のサポートに悪戦苦闘し、連絡ミスやら何やらで、咲良の仕事量を倍以上に増やしてしまい、咲良を馬車馬の如く働かせてしまっていた。

それらを乗り越えた時、ベッドに突っ伏し屍の如く動かなくなった咲良のやつれた顔は、今でも槙の胸に深く刻み込まれている。


「あれは、俺の管理不足でもあるから。槙ちゃんのせいだけじゃ、」

「もうしないから!絶対しない!スペルミスも日付の確認も、数字関係も!」

「はは、荷物持ちも大事な仕事よ、槙ちゃん」

「お、俺、絶対認めさせるから!咲良君!」

「はいはい期待してるよ。あ、そろそろだ、行くよ」

「う、うん」


まだ意気込みは空回っているが、時間は時間だ。

「しっかりな!」「いつでも帰ってきて下さいよ!」なんて大きく手を振る二人に、槙と咲良も手を振り返し、彼らは賑やかに日本を旅立った。





それから飛行機内の席に落ち着いて、咲良は不意に槙に尋ねた。


「本当に良かったの?」

「…咲良君こそ」

「はは、気にしてんの?槙ちゃんは優秀だから大丈夫。ミスはあれだけじゃん。俺は槙ちゃんが居てくれて、楽できてるから」

「それなら良かった。俺も探してみる、自分のしたい事とか、…自分の事も」


咲良は「そっか」と頷き、それからは何も言わなかった。槙は日本の空に目を向け、織人の姿を思い浮かべた。

やっぱり会いたかったな。そう思い、慌てて頭を振る。織人(おりと)の邪魔をしてはいけない、向こうに着いて、落ち着いたらメールを送ろう、織人はなんて返してくるだろう。それを想像すれば、少しだけ寂しさが紛れるような気がした。






「良かったの?本当に」とは、恋矢の言葉だ。空港のロビー、その柱の影には織人がいた。


「良いんだよ。会ったら絶対、行くなって言いたくなる」

「だからって、ここまで来たらさ」

「…今生の別れでもあるまいし。それに、俺はまだガキだから、結局あいつに頼っては貰えないから。早く大人になって、それで会いに行くって決めたんだ」


ぎゅっと拳を握る織人に、恋矢と龍貴は顔を見合せ、頬を緩めた。


「よーし!そんじゃ、先生が大人の階段の上り方を教えちゃおっかなー、あんなことやそんなこと?」

「あ!ダメっすよー、坊っちゃんに言いつけちゃいますよー」

「な、何教えようとしてんだよ!スケベ教師!」

「あれれ?いやらしい事想像しちゃった?俺は大人のマナーでも教えてあげようと思ったんですがー」

「な…!た、龍貴が変な事言うから!」

「俺は裏技使うのかなーって思っただけっすから!」

「…裏技?」

「ルールに裏はつきものでしょ?あ、俺は勿論、もうやってませんよ」


にこりと爽やかに笑うが、それが良くない事なのは良く分かった。恋矢は気を取り直して「まぁまぁまぁ」と、織人の肩に腕を回した。



織人は大人に拘っているようだが、子供の頃に思っていたよりも、大人は大人ではないと、恋矢は胸の内に思う。


かっこよくて、誰からも憧れられる大人なんて、そうそうなれない。端から見たらそう見えても、中を覗けば皆何かを抱えて余裕なんてなくて、必死な人間ばかりだ。

それでも、夢は大きく味方するし、心を武装して顔を上げれば演じてもいられる、理想的な何かに。それでもきっと疲れてしまうから、そんな時は頼って貰えるような存在でありたいものだと、不愉快な表情を浮かべる織人の横顔に思った。

それが、幼なじみの幸せに繋がるなら、なおのこと。


「おい、俺に凭れかかるな!」

「そんじゃ、織人の料理でも食べに行くか!」

「いいっすね!」

「もう、俺は絶対あんたらみたいな大人にならねぇからな!」


織人が大人になって槙を迎えに行った時、その日の空が今日のように、いや、それ以上に晴れやかだといいなと、そう願いながら。





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