第1話 魔法のほ乳瓶
SF空想科学 にて ベイビーアサルト を連載中。本作はその第二部です。
第一部の伏線を第二部で回収、またはその逆、もある仕組みです。
第一部と合わせてお楽しみください。
「ほ~れ。ファイヤーボール!」
赤い帽子の少女がそう叫ぶと、指先にこぶし大の炎が生まれ、敵に目がけて飛んでいく。
火球は複雑な動きをし、前衛のふたりの敵を通り過ぎると、最後尾の敵に襲いかかった。
「グギャアアア」
その「敵」は異形の魔物だ。緑色の肌を持つゴブリンであった。火球はゴブリンの顔に命中し、断末魔の声を上げたゴブリンは、白い光となって消えていった。
「ほれ。ぬっくんも!」
少女に、「ぬっくん」と言われた少年も全面に手をかざす。「ライトニングボール」と呪文を唱えるが、少し気恥ずかしそうだ。出来上がった光の玉は、クルミくらいの大きさだった。
「それではいけません」
少年の後ろに、少女が立つ。白いドレスと大きな花の髪飾り。高貴な気配を漂わせている。その少女が、魔法を生成する少年の腕に、そっと手を置き、こう呟く。
「‥‥‥‥【リンク】。【大魔力】」
ボオゥワア!!
その瞬間、少年の掲げた光の玉が、人の上半身ほどの大きさに増大した。驚いて怯む少年をよそに、その白いドレスの少女は、涼し気な表情だ。ゴブリン達は、増大した魔力を見せつけられて、逡巡している。
「‥‥‥‥ほら、よく狙ってください」
少女の言葉に頷いた少年が、光の大玉を射出する。が。
光の玉はふたつに分かれ、前衛のゴブリンを同時に襲った。光に包まれ、消滅するゴブリン。森に静寂が戻った。
「は~。ダメですよ。ぬっくんを甘やかしちゃあ」
と、赤い帽子の少女が喋った。服も赤系、忍者の様な装束だが、両足は肌を露出させていた。それに、白いドレスの少女が答える。
「だって、あれだと明らかに的を外しそうだっだんです」
言われてしまった少年は頭を掻く。それを見た赤い帽子の少女が
「あ~。気にすんなよ。ぬっくん。レベルアップの為の戦闘なんだし。取りあえずコレで今晩のゴハン代は稼げたし」
魔物の場所から魔石を回収し、帽子の少女はそう微笑んだ。サバサバした様子だ。そのままギルドへ行って、魔石を換金する算段だった。
「きゃあああ!」
その声に振りかえると、白衣の少女の傍らで、少年が光に包まれている。「あちゃ~」と帽子の少女が頭を抱えた。
光に包まれた少年は、月齢5カ月ほどの赤ん坊になっていた。ふわふわと宙を浮き、白衣の少女が抱きとめる。
「うふふ。赤ちゃんになっちゃいまちたね~」
帽子の少女がのぞき込んで。
「あわれ。ぬっくん。この世界ではマジモンのベイビーになっちゃうとは。‥‥‥‥しかし、毎回不思議なんだけど、今コレ、ベビー服着てますけど?」
「ああそれは。わたしの魔法で着替えてます。暖斗氏の服は今、わたしのアイテムボックスの中に」
「‥‥‥‥で、姫さんは、『こうなる事』を予想して、赤ちゃん暖斗くんの服をあらかじめ発注していたと?」
「はい。麻妃さん。【魔法のおくるみ】、【魔法のほ乳瓶】、【魔法のおしゃぶり】、ですね。この3つには当然魔法効果が付与してあります。例えばこの【おくるみ】は、ふわふわ浮く仕様になってまして、ほら、この通り、赤ちゃん抱いても重くない!」
赤い帽子の少女、麻妃は、少し呆れた顔をする。
「う~ん。問題そこじゃあないでしょ? 魔法使う度にイチイチ赤ちゃんになってたら、ぬっくん何時レベルアップできるのさ。コッチに来てもう一ヶ月なのに」
「いえいえ。この【魔法のほ乳瓶】には破邪のチカラがあります。これを飲ませればまた少年の姿に戻れますよ? それに」
白衣の少女は楽しそうだ。
「わたし、赤ちゃん大好きですし!!」
少女は満面の笑みで赤ん坊に「むちゅ~」と顔をこすりつける。麻妃はため息。
「‥‥‥‥見た目と同じく、お姫様も少し天然なのかな? その身体の持ち主と同じで」
白衣の少女は。少しためをつくってから。
「ええ。わたしの中の『愛依』さんも、赤ちゃん抱っこできて喜んでますよ。わかりますもの」
そう、答えた。白いドレス、花の髪飾り。それは、彼女がこちらの世界に転移する前の恰好そのものだった。麻妃は、この世界でもおかしくないよう衣服を調達したのだが、この女性は「このままでも大丈夫」と着替えなかったのだ。
「ウチのツレにも『姫』がいるから、『お姫様』って呼ばしてもらうけど、ホントにこのままでいいんだね?」
麻妃が問いただすと、その女性、『お姫様』はこう答えた。
「‥‥‥‥やっぱり名前、エイリアと呼んでいただきましょうか。ああ、割とよくある名前なので、姫の身分を隠すために偽名、とかでなくて大丈夫です」
能天気ににこにこと笑っている。その腕の中では、あわれ「赤ちゃん」になってしまったぬっくん――咲見暖斗――が、いつのまにか瓶内に湧き出た透明の液体を、美味しそうに、んぐんぐと飲んでいる。
「ああ~。ほ乳瓶の魔力が発動ちまちたか~。おいちいでちゅね~」
その様子をジト目で見つめる麻妃。
「あ~あ。春さんとひめっちが集めるから、ここから動かなくていい、っていってもな~。他のラポルトメンバーは今頃どうしてんだか。大丈夫かな~」
麻妃は深いため息をつくのであった。
ここまで、この作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!!
ブックマーク登録、高評価を、ぜひぜひ! お願い致します!!
評価 ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に!!
↓ ↓ このCMの下です ↓↓