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第13話 第1部分の人物紹介から引っぱってるこのネタ、まだ需要あんの?②

 





「すっぽんぽん!」


 その声は、悲しく村の木々の葉を揺らす。


「今私、すっぽんぽんなんだってば!」


 聞くものはみな顔を伏せ、ひとりとして涙を流さない者はいなかった。



「‥‥‥‥すごい画だな。赤ちゃんになっちゃったぬっくん。アバターに意識乗っ取られたままの愛依。呪いでドラゴン化したひめっち。‥‥アタマ痛いわ」


 麻妃はつぶやく。


 家の前。少し開けた場所に、赤ちゃん、ガチの姫さま。ドラゴンが輪になっている。


 赤ちゃんは眠り、姫さまはすまし顔で、ドラゴンはさめざめと泣いている。



「まきっち。私この姿だと、服何も着てないんだってば。そりゃ見られて困る角度はないよ? ドラゴンだから。でも悲しくない? ぬっくんと再会して、すっぽんぽん(物理)って?」


「あ~。ひめっち。気の毒なんだけど、今回集めた面子、全員ステイタス異常なんだよ。3人が3人とも。誰一人として素の本人が間に合ってないから‥‥‥‥」


「【召喚】失敗は申し訳ございません。愛依さんとお話をするのは、次のタイミングという事で」


 麻妃がとりなし、エイリア姫がちょっと突き放した所で、またドラゴンはまた泣き出した。



「ふえぇぇ~~~ん」



 その声は哀愁を帯び、胸を打つ悲しみの泉は、決して枯れる事は無かった。




 *****




 その夜。


 結局全員、ミナトウ村のエイリア姫宅に泊まる事になった。ドラゴン姿のゆめは「外じゃああんまりだ」というみんなの総意で、何とか家の中に入り、寝る場所を確保してもらった。



「お~い。その爪じゃあ無理だって。気の毒だけどさ」


 こっそり赤ちゃん暖斗にほ乳瓶を当てようとして、麻妃に見つかり咎められた。それでちょっとへこんでいた所だったので、屋内で寝れるのはありがたかった。




 みな床につき、消灯した。だが眠れない。【龍の呪い】は伝承の龍の思念で発動するが、そのタイミングはほぼ無作為だった。【古代語魔法】という、この異世界で絋国語がデフォになる前の言語で紡がれるという。魔法陣はその古代語が図案化された物だとも。


 それで龍の姿になってしまう。いや、その肉体や能力も、龍そのものだ。




 以前、冒険の途中で魔法防御力が高く、物理攻撃も効きづらい敵に遭遇した。ゆめには荷が重く春が魔法で奮戦したが、なかなか数が減らず窮地になりそうだった。その戦闘中で龍に変身した。


「なんなのよ~! もうっ!!」


 ゆめがそう叫ぶとドラゴンブレスが発動。勢いよく放たれた火炎が、難敵と春のえりあしを焼き払っていた。



「‥‥‥‥!!」


 春は焼け焦げた自分の髪をじっと見ていて。


 そこからしばらくはドラゴンの容姿だったため、「事故防止!!」と、春との戦闘連携をさんざん訓練させられた。





 ポウワッ


「‥‥‥‥なに?」


 眠れないゆめの視界の隅に、黄色い光が灯る。


 人間の赤子ほどの大きさのその光は、みるみる大きくなって、170cmの人の形になった。



「‥‥‥‥あ!」


 ゆめは慌てて自らの体を見渡す。なにせ衣服をまとっていない。だが身体がドラゴンのままだと確認して、ほっと息をつく。――そのまま、犬の伏せのような恰好で、光る人影を注視していた。



「‥‥‥‥ふうう。戻ったか。夕飯食べ損ねたなあ」


 暖斗だった。異世界と思われる習俗の服を着ている。たぶん部屋着だ。思えばゆめは、小学校で離別して以来、暖斗の姿を見ていない。あの洋菓子店「シェ・コアラシ」での厨房にいる白衣の姿と、たまに麻妃が送ってくれる暖斗の写真だけだ。



「‥‥‥‥‥‥‥‥(ぬっくん)」


 意外と理性が働いていた。今、ドラゴンの姿で暖斗に話しかけたらどう思われるだろう?


 事情を知らない暖斗は驚くか、怖がるか? 討伐されてしまうかもしれない。



 暖斗の手にかかって死ねるのなら、実は、ゆめにとってはむしろ本望だ。


 だが、無駄に死ぬつもりもない。どうせそうなるなら、愛する人の役に立って、彼が一生忘れられないような印象的な死が、望ましい。



「あれ? 君は‥‥‥‥?」


 暖斗は驚きの視線を向け、一瞬身構える。


 当たり前だ。自分の家の玄関口に、ドラゴンが寝ているのだから。


 ゆめの寝床は一番玄関側。土間に少しはみ出したような場所。部屋の奥に、暖斗を挟むような形で麻妃とエイリア姫。ゆめとその3人との少し空いたスペースに、春が体をねじ込んで寝ていた。


 一応ゆめのドラゴン姿は、凶悪な野性のドラゴンのそれではない。暖斗達があちらの世界でよくやるゲームやマンガに出てくる、コミカルで丸っこいテイストの姿だ。

 それはいわゆる【魔物使い】、テイマーが長年飼いならした魔物の特徴だそうだ。

 村人――この世界の人々からも、「安全な方の魔物だ」と認知された姿だった。


 ゆめの心臓は高鳴る。――暖斗に逢えたよろこびと、ドラゴンに対する暖斗の反応への不安で。


 暖斗が驚き、攻撃を選択するようなら、急いで春や麻妃を起こせば良い。安全なドラゴンだと認知するようなら適当に話を合わせて、皆が起きた明日、ちゃんと事情を――麻妃の口あたりで説明してもらえば良い。


 ゆめドラゴンが身を伏せたまま、暖斗を注視して、その次の挙動を見逃すまいとしていると。




「‥‥‥‥‥‥‥‥ひめちゃん?」



 完全に予想の上の言葉だった。



「‥‥‥‥ひめちゃんでしょ? 仲谷さんと同行してたんだよね?」



 あまりのことに、ゆめは言葉が出ない。


 なぜ、なぜなんの説明も無しに、ドラゴン姿の自分を2年ぶりに逢う小学校の幼馴染みだと認識するのだ?



「ああ、ここだとみんなを起こしちゃうね。行こ。ひめちゃん」


 暖斗はトイレへと立って、ゆめをいざなった。





「う、うん。‥‥‥‥私もちょうど、トイレに行きたかった、から」





 後で死ぬほど後悔するのだが。


 これが姫の沢ゆめの、丸2年ぶりに話す





 思い人との会話、その第一声だった。






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