第13話 本編第1部分の人物紹介から引っぱってるこのネタ、まだ需要あんの?①
「ふう。着きましたね」
先を歩く春さんが、額の汗をぬぐった。
ヤナーアッラーヤ村での口腔メンテがひと区切り。歯みがき指導もして、一応後進も育てて。
村を離れて数日経っていた。
七道さん達3人とは、あそこで別れてきた。オートウム村で、また旅の一座に合流するらしい。ラポルトのメンバーが集結する時には、当然来てくれる算段だ。
今、私達は、ミナトウ村を見下ろす小高い丘に立っている。
「む。あの光は、【ライトニングボール】のようですが」
春さんの指さす方向、村の入口近くで、確かに何かが光っていて――消えた。
「大丈夫かな。今からやっとぬっくんに逢えるのに」
「‥‥ええ。戦闘は終わったようです。大丈夫ですよ」
ホントは、私が「大丈夫?」って呟いたのは、魔法の発光や戦闘のコトじゃあないのね。
ぬっくん。小学校時代の私の幼馴染み。――そして、私の思い出の人。
中学が別々になっちゃって、逢いたかったんだけど逢えなくて。
眼下の村に彼がいて、私達は今から再会をする。
彼のかたわらには私の親友まきっちがいて、いつもぬっくんの情報をくれた。まきっちの「逢えるよ」って言葉通り、逢いにいけばよかったんだとは思う。躊躇してしまった私が悪い。
でも緊張する。緊張する。緊張しまくり。
「どうしました? 顔色悪いですよ? ゆめさん」
春さんに見抜かれてしまった。私は思いっきりテンパってしまってるよ。
シェ・コアラシで失敗してるのに! 同じ過ちはしたくないのに!
下り坂で足もとがおぼつかなくなる。――と。
地面が急に光った。魔法陣だ。足元に広がる円陣は私を中心に、文字だか文様だかわからない模様でゆっくりと浮かび上がる。
「ゆめさん!」
「春さん! 助けて!!」
ふらつく私は、逃げる暇もなく魔法陣に吸い込まれていった。
*****
「よく来ました。遠路はるばるご苦労様。春」
「はッ。姫様」
長旅の労苦を慰めるエイリア姫に、春は膝をおり跪拝する。
「お久しぶり。春さん。ほ~う? 前回来た時と鎧変えた?」
そう声をかけたのは麻妃だ。
「えっ! ‥‥‥‥ああ、そうですかね」
春は目を逸らして答えた。
「でさ、いよいよ。ひめっち来てるんでしょ? 今日こそは!」
麻妃は期待の色を隠そうとする様子は無い。彼女自信が画策した通りだ。この異世界ではあるが、ついに、親友である姫の沢ゆめと、その思い人である咲見暖斗を引き合わせる。
今日はその、「運命の再会作戦」の決行日なのである!
「いや~。思えば長かった。中1から中2。夏のラポルト乗艦。その間で何とかひめっちを逢せようとしたんだけど、その間にぬっくんは愛依とくっついちゃうし、みなとの丘公園にはひめっち来ないし」
感慨深く腕を組む。
「豆腐メンタルのひめっちがやっと決心して、愛依とも向きあう決意もして。いや~。長かった。だってもう中3になっちゃうもんね」
この異世界に転移しなければ、今頃春休みでもう春には中3なのだ。エイリア曰く、元の世界に戻る時にはこの世界に何年いようとも、向こうではほとんど時間は経過していないらしいが。
「さ、春さん。もったいぶらないでよ。ひめっち今度こそ来てるんでしょ? あ、姫さん、ちゃんと愛依を【召喚】しといてよ? ウチぬっくん呼んでくるから!」
「‥‥あ! ちょっと待って岸尾さん!」
慌てて手を伸ばす春を置いて、麻妃は部屋の方に駆け出す。
――――と、奥の部屋から光が洩れてきた。ピカァ。
「‥‥‥‥あれは魔法の光ですね。そして愛依さんの【召喚】は失敗しました」
目を閉じて瞑想をしていたエイリアは、そう言ってため息をついた。
奥から麻妃が出てきた。とぼとぼと歩く彼女の腕の中には、ひとりのかわいい赤ちゃん。
「‥‥‥‥先ほどの戦闘ですね。暖斗さんは大丈夫と言っていましたが」
「だからウチとかに任して、って言ったのに。‥‥‥‥で、誰? そのドラゴン」
「‥‥‥‥お察しください。岸尾さん。性質の悪い【呪い】なんです」
家の玄関には入らず、その前をうろうろする一匹のドラゴン。
とは言っても、手足は短く凶悪な面影は無い。むしろその手のゲームから抜け出たような、マンガチックな可愛げすら感じる見た目だ。
村の人々も気にも留めない。入り口でのチェックをクリアした、という事は、「安全なドラゴン」なのだとわかっているからだ。
「旅の途中でした。あるドラゴンが嫁を欲したという伝承のある土地を過ぎる際に、どうも彼女が気に入られてしまったようで。いやはや。人気者はつらいですね。やはりあちらの世界で人気商売をしている方は、こちらでも需要があるというか、なんというか。さすがです。ああ、話しが思いっきり逸れました。いえ。この現象以外には実害はないんです。むしろ自棄になった彼女がドラゴンの戦闘力を発揮するので、荒事ではメリットの方が大きいのですが。ええ。もう、自棄になった時だけなんですが」
「もうよいです。春」
「はッ」
誰にしゃべるでもなく言葉を続ける春を、エイリア姫がぴしゃりと止めた。
「ふえぇぇ~~~ん」
そのドラゴンは目に涙をためて泣いていた。
岸尾麻妃は頭を抱えながら、天を仰ぐ。
「‥‥‥‥じゃあ、今日引き合わせる予定だった、咲見暖斗、姫の沢ゆめ、逢初愛依、3人ちょっと輪になろうか?」
その言葉に反応して、輪を作ったのは。
おくるみにくるまれて寝息をたてる赤ちゃんと。
エイリア姫と。
そのドラゴン、だった。
※「シュールな画だな」と思った そこのアナタ!!
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