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第11話 七道仮説③ 相対性理論? ふつうのJC知らないってば。

 





 ふたりに睨まれた――というか、ジト目で見られた私は、ちょっと焦って弁解を試みる。


「え? だって。え? それだけ? 私実感ないし。光が遅いと何が変わるの?」


「‥‥‥‥私がもったいぶったせいで話がもたついたが、‥‥そうか。そうだよな。普通の中学生は相対性理論知らないもんな」


「ええ。そうですね」


 七道さんと仲谷さんがうんうん、とふたりで顔を見合わせた。え? 仲谷さん理解してるの?


「頑張れよ。姫の沢。仲谷は『あっち』の世界の主だった知識は吸収してんぞ? 動機は『こっち』で知識無双したいから、らしいけど」


 その言葉に、仲谷さんもうなづく。


「ええ。調理の合い間にラポルトのアーカイブを拝見しました。出来うる限り」


 ――なるほど。私の疑問がひとつ解消した。私もふれあい体験乗艦の「特別枠」の元候補だったから、もし乗艦していれば、調理のポジションにつくはずだった。――でもまきっちから聞いた話だと、仲谷さんはほぼ、その労働を調理する時間に費やしていた、と。


 私はラポルトの炊事はほぼAIで、献立も調理も自動だと研修を受けていた。やるのは器材食材の管理や器具への投入、配膳だと。主任務は『テオブロマ』のパイロット。だから仲谷さんがそんなに調理に時間を取られるのが密かに不思議だったんだけど。

 自動調理器を使いきれなかった事に加えて、「あっち」の世界のお勉強をしていたとすれば、つじつまがあう。――うん。さすが。名探偵、私!


「残念ながら調理と、逢初(あいぞめ)さん――プリンセスガードナーの任務、それに(とき)との【霊信】もありましたので、その隙間時間では十分に知識を得られたとは言えませんが」


 ‥‥‥‥ん? あれ? 私名探偵のつもりだったんだけど。ななめ上のコメント。

 この仲谷さんのセリフはなんか色々重そうなんで、スルーしま~す。


「‥‥‥‥頑張れよ。姫の沢。仲谷はもう理解してるけど、オメ~に分かるように説明してやるよ」


 うう。なんかちょっと敗北感。でもしょうがない。素直に聞きます。


 そして、七道さんの講義が始まった。




「えっとな。姫の沢。『原子爆弾』って知ってるだろ?」


「それは当然。大昔に絋国に2個も落とされた爆弾」


「その爆弾を思いついた科学者が、E=MC²ってすごい有名な式を生み出したんだ。あ、式の方が先か? これが世界の真理だったんだ」


「へええ」


「『原子爆弾』が爆発する、その元になるエネルギーな。エネルギー=質量×光の速さの2乗。私らの体を構成するモンも含めて、原子には質量がある。それをエネルギーに変換すると、とんでもない量のエネルギーを取りだせる――」


「‥‥‥‥あっ! それなら私もわかる。その式の『光の速さ』が減っちゃったら、取りだすエネルギー自体も少なくなっちゃうって事?」


「おうおう。やるじゃね~か姫の沢。そだよ。この世界の光のスピードはちょっと遅い。私らが生きてて体感するレベルじゃあない。けど、『あっち』の世界では絶対不変だった光速度が遅い、『こっち』の世界では何が起こってるんだ?」


 ‥‥‥‥えっと。‥‥‥‥それは? 考え込む私の横で、仲谷さんが発言した。


「あちらの世界では、光は光子という素粒子、重力も、重力子という素粒子だったんですよね?」


「ああ。このままだと『こっち』の世界だけ、光が遅い分のエネルギーが存在しないってコトになっちまう。【鏡映しの世界】で、エネルギー保存の法則的に辻褄が合わなくなると思う」



「‥‥‥‥魔素?」


 私は無意識 に口にしていた。全てを理解して発言した訳では、無いのだけれど。



「おお! よくわかったじゃね~か姫の沢。そう。そうなんだよ」


 ちっこい七道さんに頭をぐしゃぐしゃ撫でられた。


「『こっち』にあって『あっち』に無い物。またはその反対。って考えるとコレになるんだよ。魔素素粒子、とでも言うべきか? アクシオンとか候補はあるんだけど、そこまで私も詳しくないからなあ――」


「――その光が遅い分のエネルギーが、魔素に置き換わったって考えると、エネルギーが消失したって考えるよりはよっぽど色々説明がつくんだよ。その魔素が電磁気力に相互作用すんならなあ。――どうだ? 仲谷」


「‥‥‥‥それが本当なら、すごい事になります。この世界の魔力総量を算定できるって事ですよね? でしたら、魔王攻略にも光明が見えてきます」


「この世界で起こっている摩訶不思議な現象、全部説明究明しようとしたら、絋国の物理学者全部転移させね~となあ」



 ――――んん? 私は1つ疑問が湧いた。


「でも、魔法を使う時って、例のエイリア姫様とか、魔力の多い少ないとか、この系統の魔法が得意不得意とか、それこそ【固有スキル】とか。――なんでこんなに魔法の使い勝手に個人差があるの? 魔法がそういう現象なら、みんな同じに使えるハズだよね?」


「「‥‥‥‥」」


 七道さんと仲谷さんが黙って顔を見合わせる。――あ、私、何かおバカな事言っちゃったかな?


 慌てて釈明する。――これ、今日2回目だ。


「えっと。ごめんなさい。変な事言っちゃった? ‥‥‥‥あ~。例えばぬっくんとかはどうだっけ? 魔法使って魔力ゼロだと『赤ちゃん』になっちゃうんだよね? この世界だと。あ~~。まるでマジカルカレントみたいだ、ね~。ね~~」


 私が苦し紛れにこんな事を言っていたら、七道さんの右眉がピクリ! と上がった。


 ああ、怒られるのかな、私。――――って思ったら。



「ナイスな。姫の沢。‥‥‥‥盲点だったぜ。仲谷が言う通り、『あっちでも魔法は使える』んだよな?」


「ええ。七道さん。ただ魔素が極端に薄いだけです」


「じゃあ、その名前の通りじゃあ無いか。『マジカルカレント』。‥‥‥‥この光速度の検算をあの人間電算機にやらせようと思ってたけど、この件でも逢初女史に会わなきゃなんなくなった‥‥‥‥!」


「ですが七道さん。逢初さんと会うのは、正直まだ時間が必要です。咲見さんも岸尾さんも焦らず気長に待ってる状況で」



 ――――え? 何? 怒られなくて良かったけど、何か話がどんどん進んでない?



 バタン。――ずっと後ろで座ってた網代さんが席を外した。「トイレ」って言い残して。



 私は状況がイマイチ飲み込めず、周りをキョロキョロ見てたんだけど。




「‥‥‥‥やはり。咲見さんは『勇者』なんですね」





 ‥‥‥‥仲谷さんのその言葉が、妙に耳に残った。






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