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第11話 七道仮説①:魔法が使える仕組みを考察! でも考察回はダルいって言われそう。

 





「いよ~~~う! 仲谷か!」


 劇が終わった後、私達は一座の楽屋を訪ねてみた。こういう時、お姫様の側近だった春さんの肩書はチョー強い。


 そこで七道さんにこうして盛大に出迎えられた。多賀さん網代さんもいる。多賀さんは華やかな踊り子の恰好。残りふたりは作業員みたいな地味な服だ。



 七道さんが、この異世界に来てからをざっくり話してくれた。


「いやあ。私ら3人で転移してきて、この辺の村で取りあえずスキル使って生活用品をクラフトしてたんだ。それで食べ物とかと交換してもらって何とか暮らしてたら、ココの座長に拾ってもらってな」


「なるほど。この国には旅芸人の一座がよくいます。他に娯楽もないものですから」


 そんな感じで仲谷さんが相づちを打った。



「でな。柚月は踊り子でいくって話になってな。――ただコレが意外とバズって、私ら3人スター待遇なんだよな。今」


 後ろから私が口を挟んだ。


「ちなみに、七道さんと網代さんのポジションは?」


「私は大道具」


「あ~しは小道具」



 ‥‥なるほど。  と、七道さんがこちらをじっと見ていた。


「君が暖斗くんと岸尾のツレ、姫の沢さんか? 公園で逢う段取りのハズがとんでもない事になっちまったなあ」


 その表情を見て、私は思う。彼女は割とぶっきらぼうな物言いをするけれど、悪い感じの人ではないんだと。


「私と仲谷さんでメンバーの所在確認をしながら、(きた)る時に向けて連絡係をします」


「うん。頼んだぞ。姫の沢」


 ‥‥‥‥あれ? でももう呼びつけされてる‥‥‥‥!?





 その後、七道さんに連れられて、座長さんのいる宿舎を訪ねた。多賀さんはまだこの後ステージがあるそうで、座長命令で休憩に入るそうだ。は~~。マジで売れっ子だ。

 座長さんはいい人そうな、でもなかなかに目つきの鋭い人だった。「異世界転移とか、庶民は縁がないんだけど、一芸持つ異世界の人は重宝してるよ」とのこと。仲谷さんの言う通り、この世界では異世界人ってそんなにめずらしくはないんだね?



 ――――そしてさらに、七道さんに手を引かれて、彼女達3人が寝泊まりする宿舎に案内された。



「どうだ!?」


 これが七道さんの第一声。


「数百年前の欧圏では、もう光の速度は測定されてたんだぜ!?」


 これが、私達を部屋に入れるなりの、彼女の第二声だった。




 彼女達の部屋、ありきたりな木製の宿舎なんだけど、部屋の中央にある什器や器物が異様だった。理科の実験準備室みたい。

 ガラス製? のレンズと、変な色の鏡、あと回転しそうな軸ありの歯車があって、あとよくわかんないビーカーとか実験器具が並んでいた。


 私も仲谷さんも息を飲む。


「光源は太陽光。計算するには人間電算機の逢初がいりゃあ楽だったんだけどな? まあ、しょうがない。時間かかっけどそれは自分でやるとして」


 七道さんが、部屋にあった椅子にどっかりと座る。その脇の椅子に網代さんも腰かけた。


 私達も椅子を勧められた所で、七道さんが、意味ありげに言った。



「こういうファンタジー物ってさあ。魔法が使えるじゃん? この世界の魔法の謎。知りたくね~か?」




 *****




「これは、異世界とかそういうモンで何で魔法とかが使えるか? いったいどうなってんだ!? って疑問を考察したチャンネルだ。そんなもん気にせずにファンタジーを楽しみたいって連中は、ここでブラウザバックしてくれ!」


 七道さんが、高らかにそう言い放つ。――――誰もいない方向に向かって。



「‥‥‥‥一体何の話ですか?」


 仲谷さんが微動だにしないので、しょうがなく私がツッコむと。


「ああ、DMTデッキでも暖斗くんにそうやってツッコまれたな。懐かしい」


 七道さんはその誰もいない方向に向かって、遠い目をしていた。



 あ~。暖斗(はると)くん。ぬっくんぬっくん。中学校も離ればなれ。ラポルトでも同乗できず。そしてここ異世界でも絶賛すれ違い中。もう! いったいいつになったら!



 と、つい考え込んでしまって、私が肩を落としていたら、仲谷さんが、私の肩をポン!



「さっきの座長さんのお話。お受けしないんでしょ?」


 ――そう、実は、さっきの座長さんにご挨拶した時。


 お話しながらしばらく私を見て。「君お芝居できる? 踊りはもうできるよね?」って言われていた。柚月さんとダブルセンターで行こうって。異世界でもその道の人はやはりプロのようです。私が演者側の人だと見抜かれました。でも、もちろんお断わりしました。


 早くラポルトメンバー全員見つけて、ぬっくんに逢いたいもん。




「じゃあ始めるか。仲谷は当然魔法には長じてるんだよな? 私の推論、この世界を歩くのに知ってて損はね~~ぞ? ここに逢初女史と紅葉ヶ丘がいね~のがちと残念だがな。E/M/Rで是非意見を聞きたかった」


「EMR?」


 私はその単語に即座に反応して、思わず聞き返してしまう。


「電気的根幹長測定? なぜ今抜髄のお話が?」


 苦笑して手を振ったのは七道さんだった。


「違う違う。E/M/Rってな愛依(えい)、澪、璃湖のイニシャルだ。マジカルカレント究明同好会だよ。‥‥そうか。姫の沢って準歯科衛生士なんだってな。ほら。仲谷がきょとんとしてる。歯科の話はまたいづれだ」


「ああ、ごめんなさい」


 私も謝った。――たぶんこのやり取りの意味がわかるのは、歯科関係の人だけだ。そして私の勘違いで、思いっきり話が脇道に逸れてしまった。




「じゃあ行くぞ。魔法の秘密。その推論を」


 あらためて。座ってた椅子から、七道さんは身を乗り出してそう言った。





 そのセリフに、仲谷さんも前傾になる。彼女には珍しく、むっちゃ興味を示していた。






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