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<第五十二話>動物園

 「私、ズーラシアっていうよこはま動物園には何回も行ったことがあるのですけれど、上野動物園に来るのは、実は今回が初めてなんです。」

 入園してすぐに、ワクワクしながら静が東山に報告した。


 「そうなんですか。僕はズーラシアも上野動物園も両方とも行ったことがあります。

 とは言っても、どちらも小さな時以来しばらく行っていなかったので、本当に久しぶりの動物園なんですけれどね。」

 東山は、入り口で手に入れたパンフレットの地図を確認しながら返事をしていた。


 「東山さんは、地図とかをちゃんと確認しながら歩く方なんですね。

 私は、好きに歩いて行って、今何処にいるんだろう?ってたまに現在位置を確認する位でしか地図は見ないので、なんだか安心します。」

 静は、動物の檻に近づいて行ったり、周りの景色を見ながらゆっくり歩いたりと、ずっと楽しそうにしている。


 「西谷さんは、動物がお好きなのですか?とても楽しそうですね。」


 「はい、動物は大好きです。家にも犬や金魚がいるんですよ。」


 「そうなんですか。じゃあ今日の予定を動物園に変更したのは正解でしたね。」


 「はい、どうもありがとうございます。

 あっ、でも美術館もちゃんと楽しみにしていたんですよ。」


 「すみません。改装情報も知らなくて…。」


 「そんな、謝らないで下さい。そうじゃなくって、どっちでもすごく楽しかったって伝えたかっただけなんです。


 動物園で思い出したんですけれど、私も小さかった頃は、家族で本当によく色々な場所に出掛けていたんですよ。

 動物園、水族館、遊園地。もちろん旅行にも沢山行っていました。


 でも私達が大きくなってきたら、部活や受験とかで、なかなか予定が合わなくなってきてしまって、いつの間にかあまり家族では出掛けなくなってきてしまったんですよね。」


 「僕の家もそうですよ。

 

 子供は大きくなってくると、親よりも友達と出掛けるようになってくるんですよね。

 今日の僕達がまさにそうですよね。」

 東山が笑顔で答えた。


 「言われてみると、確かにそうなんですよね。」


 (今、東山さんは私達の事を『友達』って言っていたよね。…そうだよね。)


 きっと、何気ない東山の言葉の使い方だったのだろうが、静は敏感に反応してしまって、少し落ち込んでしまっていた。


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