<第四十八話>話しやすい
驚く静が遥に話しかける間もなく、彼女は帰っていってしまった。
「明るい妹さんですね。」
静かになった空間を繋ぐように、東山が話しかけてきた。
「そうですね。いつも元気で、明るい妹なんです。
喜怒哀楽をちゃんと出せる子なので、羨ましく思います。」
私がしみじみと言った。
「それじゃあ、西谷さんは感情を表に出すのが苦手なのですか?」
東山が聞いてきた。
「そう改めて聞かれると…。
自分の意見を言わなきゃいけない時に、上手く言えなかった事があったから…、それで歯がゆい思いをしていたので、ついそう言ってしまっただけかもしれないですね。
確かにそう言われてみれば、私も自分の気持ちに素直な方なのかもしれません…。
ありがとうございます。なんだか私、今の質問で頭の中がすっきりしました。」
静が嬉しそうに言った。
「そうですか。何だかよく分からない所もありますが、西谷さんがそんなに嬉しそうにしているなら、良かったです。」
東山も嬉しそうに答えた。
「ところで、先程妹さんが仰っていた引っ越しの話ですが、ご実家は、どちらなのですか?」
「横浜です。」
「そうですか。同じ関東でも、もう今日のように偶然お会いする機会も無くなってしまいますし、寂しくなりますね。」
東山が言った。
「…東山さんとは今までずっと偶然お会いしているんですね。
初めてお会いしたのが、私を助けて下さった時。
次が、その交差点。
そして、今日…。
本当にすごい偶然ですね。」
(そっか、東山さんとは、全部偶然お会いしていたんだ。
とても話しやすい方だし、なんだかずっと前から知っていたような気がしていたのにな…。
本当だ!もう会えなくなってしまうの、確かに寂しいかもしれない…)
「あっ、すみません!
西谷さんの様子を見に事故の翌日に病院に行ったのは、偶然じゃなかったですね。」
東山が照れ臭そうに言った。
「あらっ、私、そんなつもりでお見舞いに来て下さった事を言わなかった訳じゃないです。
それは、私にとっては事故からずっと入院をしていたし、一緒になっていました。
お見舞いにわざわざ来て下さった事、嬉しかったですよ。」
「あっ、いえ、そんな。ありがとうございます。」
二人で同時に笑い合っていた。




