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<第四十二話>笑い方

 「変な奴だな。もうちゃんと話したじゃないか。静が納得出来る内容だっただろ。」

 明がそう言って笑った。


 この明の笑い方は、私の好きになった明の笑顔ではなかった。



 (…明るい性格だから明…

 初めて会った時、そう言って微笑んできた明の笑顔は、キラキラと輝いて見えていた。


 だが今の明は、歪んだ笑いを作っている。私の背筋にスウーッと冷たい物が走るような顔。


 彼がこんな顔をする時があるのに気が付いたのは、いつからだったんだろう…


 

 あれはそう、私が大学二年生の時。新入生がサークルに入って来て、その中の一人と明が付き合っているみたいだと友人から言われたんだった。


 その事を明に聞いたら、『付き合っている訳が無いだろ。お前という彼女がいるのに。』そう言った時のあの顔だ。


 あまりに不気味で何だか怖くなって、それ以上何も聞けなくなったんだっけ…。


 この顔の明に、その話が嘘なのか真実なのかを問い詰める強さを私が持てなかった。


 

 …それだけじゃない。

 明に何かがある度に、『自分にその原因があるんだ。だからもっと自分が頑張らなくちゃいけない。そうすれば、次はきっと私の事が大切な存在だと分かってくれるはず』ずっとそう信じて過ごしてきていた。でも…)



 「明は、ずっと何も変わらないね。

 今、嘘を付いているって顔をしているよ。」

 私は、静かに話し始めた。


 「はぁ?何がどう嘘なんだよ。」

 明が不快な顔をして話してくる。


 「それは、明が知っているよね。結局そんな時は、いつも本当の話をしてくれない。」


 「本当の話?僕の話を嘘だって思うのは、お前の勝手だろ。」



 その明の答えに、私は何も答えず、ただ彼の顔を見つめていた。


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