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<第四十話>言いがかり

 「そりゃあ、あるだろ。」

 明が平然と言った。


 (ああ、そうなんだ…。どうしよう、もうちゃんと聞かなきゃいけないよね。)


 「そうなの、どうして?

 だって出張先からの出社なら、ホテルで既に着替えてから出掛けているよね。

 どうしてわざわざ、トイレなんかで着替える必要があるの?


 だからそれって、今日みたいに誰かの部屋に泊まったけれど、スーツケースをコインロッカーに入れてしまっているから、朝にわざわざトイレで着替えなくちゃいけない状況になっているってことなんじゃないの?」

 私は、明にドキドキしている自分を悟られないように、冷静に話した。



 「静、お前何を変な事を言ってくるんだよ!」

 やはり聞かれたくない事を聞いていたのだろう…。明がいつものように怒って答えてきた。


 (きた!どうしよう…話を続けるのが怖い…。


 『怖い!?』


 私は、いつも何が怖かったの?

 明が怒ることが?

 明に嫌われることが?


 …ううん、そうじゃなかった。

 ずっと避けていたのは『真実を知ること』。


 明が、私の思い描いた彼氏さんの姿から外れていってしまうかもしれないという不安から逃げていただけだったんだ…。)


 「明、お願いだから怒らないで。ちゃんと話そうよ。」

 私は静かに話しかけた。


 「そっちが言いがかりを言ってくるからだろ。自分が悪いのに、その言い方はなんだ。」


 「そっか、ごめんね。じゃあ言いがかりじゃないって事を説明して。」


 「説明って何だよ。そもそも言いがかりに説明なんて必要ないよな。」


 「そうかな?

 前に明が、私の事を浮気しているって言ってきた時、私はちゃんと説明したよね。

 それで明の誤解も解けたよね。


 だから、明にもそうして欲しいの。」


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