<第三十八話> 再 会
どんな返答をしなければいけないのかが、分からなかった。私は…
「遥、ごめん…。
せっかく誠二さんとの話をしていたのに、いつの間にか私の話に変わっちゃって、すっかり暗い話題になっちゃたよね。ごめん。…もう、この話は止めよう。」
私は、遥にお願いした。
「うん、分かった。私の方こそごめん。
お姉ちゃんがもう悲しい思いをしないように、応援しているからね。
何かあったら、いつでも家に帰って来てね。」
「…それ入院した時、お母さんにも言われた。
そっか、あの時お母さんにも心配させていたんだね。私、情けないなぁ。」
「何言っているの?
だって私達は、お姉ちゃんの一番の味方なんだからね。
いつでも応援しているよ。笑顔のお姉ちゃんが一番好きなんだから。
お姉ちゃんだって、もしも私達が悲しい顔をしていたら、絶対に同じ事をするでしょ。
だから弱った時に家族に甘えるのは、当たり前の事なんだよ。」
遥が力強く言った。
「ありがとう、遥。」
私は、家族の温かさに感謝していた。
翌日、会社で仕事をしていても、明の事を考えると書類に気持ちが入っていかなかった。
結局、いつもより早めに、会社を出ることにした。
事故に遭いそうになった交差点を渡って、家に向かってトボトボと歩いていた時、
「西谷さんじゃないですか?」
と私を呼び止める男性の声が、後ろから聞こえて来た。
振り返って見ると、東山さんが笑顔で立っていた。
「お久しぶりです、東山さんですよね?」
私も挨拶をした。
「はい。覚えていて下さって嬉しいです。
大丈夫ですか?また下の方を向いて歩いていたようですが…。」
東山さんは心配した顔をしながら、私の顔を覗き込むように見ていた。
「えっ!?私下を向いて歩いていましたか?気が付かなかったです…。」
「駄目ですよ、ちゃんと前を向いて歩かなきゃ。
また事故に遭いそうになった時に、もしも僕が居なかったら、助けられないじゃないですか。
そうだ!そういう時は、富士山を見ると良いですよ。」
東山さんが笑顔のまま明るく言った。
「富士山ですか?」
私は唐突に景色の話題になった事に少し驚いて答えた。
「はい。お天気の良い時に富士山が見えるだけで、今日一日幸せに過ごせる気持ちになるんですよ。すごいでしょ。」
「そう言えば、実家にいる時は見えたんですけれど、今の家からは全然見えないんですよね。」
私は残念そうに答えた。
「そうなんですね、すみません。それじゃあ、朝日は見えますか?」
「ええ、日の出は綺麗に見えます。」
「じゃあ、それで元気になりましょう。」
東山さんは嬉しそうに言った。
「そうですね、そうしてみます。」
私も笑顔で答えた。
この後、東山さんは外出先から会社に戻る途中だった事を教えてくれた。
そして最近仕事が忙しい話もしてくれて、お互いに忙しいですねと話していた。
「じゃあ、私はこっちなので、ここで失礼します。」
次の信号で私の進む方向を見た東山さんがそう言って足早に行ってしまった。
こうして私の朝のルーティンには、今までの占いに、朝日を見る事も加わった。




