<第三十四話>新事実
夜に自分の部屋でくつろいでいると、遥が訪ねて来た。
「今日は急いで帰って来てくれて、ありがとう。
お姉ちゃんの事、写真で見るよりずっと綺麗な人だねって褒めていたよ。」
遥が嬉しそうに話しかけてきた。
「ううん。私こそ予定を変更して、急に出掛けちゃってごめんね。
いやいや、綺麗って…それは誠二さんのお世辞だよ。でも、ありがとうね。」
私は、急な外出の非礼を詫び、お世辞に照れていた。
「何照れてるの!?…嫌だ、自覚ないの?
お姉ちゃん綺麗だよ。これだから超天然ちゃんって怖いわ。
同級生の中にも、お姉ちゃんに憧れていた子結構いたんだよ。」
同じ私立の中高一貫校の二つ下の学年に通っていた妹から、初めて聞く話だった。
「聞いたこと無いけれど…?」
私は答えた。
「もう…。お姉ちゃん、生徒会の会計をやっていたじゃない。だから、結構下級生に顔を知られていたんだよ。
それで、才色兼備でカッコイイ先輩って憧れていた子が多かったの。
よく『遥はお姉ちゃんと違うねぇ』って、私は言われていたんだよ。
お姉ちゃんが女優さんなら、私はお笑い担当って感じって言われていたの。
だから、違う大学に入って、お姉ちゃんの事を知らない人達の中で生活するまで、私結構自分の事を、味噌っかすって思っていた所があったんだよ。」
「その話、本当に知らなかったよ。
先生に言われて入った生徒会にそんな副産物が生まれていたんだねぇ。
でもさ、遥は全然味噌っかすなんかじゃないじゃない。
明るくっていつもクラスの人気者で、地味な私にしてみたら、ずっと羨ましい存在だったのよ。」
「そんな事ないって。真面目で綺麗な優等生のお姉ちゃんの存在が強過ぎて、せめてって明るく振舞っていただけだって。
それにしても、お姉ちゃんがこの話を知らなかったなんて、驚いたよ。
そっか…。当時はそう言われて落ち込んでいたから、お姉ちゃんに言えなかったんだ。
…でもさ、最近は自分の事をちゃんと好きになったんだよ。これも誠二のおかげかな。」
遥が少し照れながら話していた。
(誠二さんは、遥の大学一年生の時からの友人。
今年のゼミ合宿中に告白されて、付き合う事になったのよね。
その彼の存在が、遥に自信を与えたんだ。素敵ね。)
「遥、本当に幸せそう。
良かったねぇ、誠二さんみたいな人と付き合っていて。」
私はしみじみと言った。




