<第三十三話> 来 客
「初めまして、板橋 誠二です。
遥さんとお付き合いさせていただいております。」
緊張した面持ちの男性から、帰宅するや玄関先で挨拶をされて、出迎えられた。
「お姉ちゃん、お帰りなさい。
驚いた?内緒にしていてごめんね。来客は、私の彼氏さんでしたぁ。」
遥が彼の隣に立ち、嬉しそうに話しかけてくる。
(明に変な疑いをかけられて落ち込んでいる時に、これはちょっとキツイかも。
…いや、めでたいのか。静、笑わないと…)
急いで帰路についていたが、移動中ずっと、頭の中は明との会話がグルグルしていた。
でも、自分の落ち込みは表に出ないように挨拶をした。
「初めまして。いつも妹がお世話になっております。
外出していて、お待たせしてしまってすみませんでした。」
「あっ、いいえ。自慢のお姉ちゃんだから、ぜひ会っていってと言われまして…。
帰宅を急がせてしまって申し訳ありませんでした。」
恐らく遥が勝手に掛けてきたであろう電話を、誠二さんがその事を詫びてきた。
「いいえ、そろそろ帰ろうとしていた所だったんです。大丈夫ですよ。
ふふっ、遥は、思い立ったら即行動の子ですからね。」
私が笑顔で答えた。
「そうですね。いつも明るくて、迷わないのが遥ちゃんの良い所です。」
誠二さんも同調する。
「何、二人して…。なんだか私をバカっぽいキャラにしていない?
私は、いつもちゃんと考えた上で、行動していますよ。」
遥が、頬を少し膨らませて、怒った風に笑顔で言った。
その後、三人で居間に移動し、誠二さんと家族全員で、遅めの昼食を楽しく食べた。




