<第三十二話> 急 用
「ピーン」
私のスマホにLINEの連絡が入った。
「LINEだな。
最近会っている間に、ちょくちょく入ってきているよな。
でも僕がいる時は、確認をしようとしないよな。」
明が言う。
「大体が家族からだからだよ。
家を出たタイミングで退出していたんだけれど、退院してから家族LINEにまた入れてもらったの。
でも急ぎの用事じゃない事も多いし、明が帰ってから見た方がいいかなって、遠慮していたんだよ。」
私は答える。
「ふ~ん、そうなの。」
明が腑に落ちない顔をしながら言う。
「そんな風に言うなら、今画面を見せようか?
…ほら、ね。やっぱり妹からだ。
あれ?『まだ帰って来ないの?』って聞いてきてる。
明ごめん。ちょっと急ぎだったみたい。電話してみる。
もしもし、遥。何、どうしたの?
…えっ、私が帰って来るのをずっと待っているって?
…そうなの?じゃあ昨日からちゃんとそう言ってくれれば良かったのに…。
ごめん、すぐに今から帰るよ。…本当にごめんね。」
私は電話を切り、明の方を見た。
「ごめん、明。ちゃんと予定を把握していなかったみたいで、私今から急いで家に帰らないといけなくなっちゃった。」
「何?突然。」
スマホの画面を見て、ようやく納得した顔になった明だったが、あまりの展開の早さに、今度は少し慌てていた。
「今朝、明から急に『今日部屋で会おう。今から出るから。』って連絡が入ったでしょ。
私ね、金曜の夜から実家に帰っていたの。でも明に呼ばれたから、準備して慌てて出てきたんだ。
でも昨日、妹に『明日は家に居る?』って聞かれた時は、居るって答えていたんだよね。
出掛けるのが早くて、遥はまだ寝ていたから、一応お母さんに、遥へのごめんの伝言をお願いして、それでもう大丈夫かなって思っていたんだけれど、実は来客があって、私の事も待っているんだって。」
私は、明にこの週末の経緯をざっくりと説明した。
「ごめん、静。
今朝の連絡、静が家に居なかったから、こっちに呼び出そうと思って連絡していたんだ。
実は、駅のスタバで静が部屋に帰るのを確認して、その後部屋に来たんだ。
…実家に居たんだな。」
明が申し訳なさそうに言ってきた。
「何?さっき言っていたみたいに、それも私の事を浮気しているって思って呼び出していたの?
…ひどい誤解だよね、それ。
まぁ、ようやく納得してくれたからいいけれど、もう止めてね。」
気分が悪かったが、落ち込んだ様子になってしまった明を見て、もうこれ以上怒ってもしょうがないと思った。




