<第三十話> 週 末
「最近ずっと忙しそうだな。」
週末、明と部屋でのんびりと過ごしていると、彼が聞いてきた。
「そうだね。仕事のペースがようやく掴めてきたから体も慣れて来たけれど、最初は会社の往復だけで疲れ切っていたよ。」
私は、しみじみと答えた。
「そんなに忙しそうに仕事をしているけれど、静ってずっと仕事を続けたいって思っている子だったの?」
明がからかうように言ってきた。
「どうだろう?ずっと続けたいのかなんて考えた事なかったな。
それより、今を一生懸命やっているって感じかなぁ?みんながキラキラ仕事に情熱を向けて取り組んでいるから、私も負けていられないって感じ。」
私は、今の自分の気持ちを考えて答えた。
「でも静は一般職なんだし、そんなにアクセク働いたって出世するわけじゃないだろ?
平日だって、俺が連絡した日は、早く帰るようにしたらどうだ?」
この明の返事は、私には、少し悲しい答えだった。
「あっ、ごめんね。平日全然会えなくて。 終電近くまで仕事をしているからだよね。
でもさ、私も会いたいなぁって思ってはいるんだよ。」
明から連絡が来ても、断る事が多くなってしまっている自分が悪いからと、素直に謝っていた。
「だからさ、平日に一般職がそんなに遅くまで毎日働いているのって、そもそも変じゃない?
うちの会社の子は、遅くても九時になったら帰っているぞ。」
明の話が続く。
「…私も庶務にいた頃はそうだったね。
そう言われると、随分忙しくなっているんだね。」
そんな風に言われても、どうしようもないじゃないと申し訳なくなってきて、答える声が小さくなってしまった。
「なんだよ、やけに声が小さくなってきたな。
…本当に仕事なのか?
静この間、部屋に帰って来なかったよな。」
明が問い詰めるような口調で言ってきた。




