<第二十八話>母からの提案
夕方になり、頭部の検査が問題無く終わった。
「頭に異常が無くて、本当に良かったわね。
明日からお仕事に戻っても、あんまり無理しちゃ駄目よ。一応あなたは病み上がりなんですからね。」
母が帰り支度を一緒にしながら、嬉しそうに話しかけてきた。
「そうだね、気を付けるよ。…って私って病み上がりって言うの?病気はしていないよ。」
私は母の言葉に突っ込みを入れた。
「あらっ?
でも入院までしたんだから、やっぱり病み上がりでいいんじゃない?」
まぁ、体を大事にして。お母さんは、無理をしないようにして欲しいの。」
母が答える。
「そうそう、静ちゃん。
これからは、家に帰って来る日も作って欲しいな。
お父さんも遥も今日だって会えてないんだし、あなたの元気な顔、見たいと思っているのよ。
遥なんてお姉ちゃん大好きっ子なんだから、きっと話したい事も溜まってきているんじゃないかしら?
そもそもあなたは家出をした訳じゃないんだからね。一人暮らしを始めたからと言って、急に全然家に寄り付かなくなる必要は無いと思うの。
今日の晩ごはんをお家で食べたいなぁとか、ちょっと自分の慣れたベットでゆっくり寝たいなぁとかそんな軽い気持ちでフッと帰ってきて欲しいのよ。
ちなみにご飯は、どんなに遅くなっても会社を出る前に連絡してくれたら、簡単な物なら作って待っているわよ。
もっとも、静の好きな物をしっかり食べたいなら、事前に買い物に行く余裕をもって連絡をくれたら、準備しておくからね。
どうする?今日もこれから一緒に家まで帰る?」
母が私の顔を見ながら聞いてきた。
「えっ!?
ありがとう。どうしよっかなぁ…。
確かにお母さんの顔を見たら、皆にも会いたくなっちゃった。
…うん、一緒に帰る。」
(もう家を出るんだから、しっかり一人で生活しなくちゃいけないって考えていた。家に帰ってもいいなんて、考えてなかったなぁ。)
母は凄いなぁと嬉しく思いながら答えていた。




