<第二十四話>昼食の時間
母と話をして過ごしていると、看護師さんが部屋に昼食を運んできてくれた。
いつの間にか、もう昼ご飯の時間になっていたのだ。
「お母さんもお腹空いたでしょ?そろそろ帰る?」
私は、運ばれてきた自分の昼食をベッドの机の上に置きながら聞いた。
「いいえ、まだ帰らないわよ。検査が終わるまで一緒にいるつもりだもの。あら?静は帰った方がいいのかしら?」
「ううん、そうじゃないけれど。お母さん忙しいだろうから悪いなって思って。」
「大丈夫、そんな忙しくなんて無いわよ。
それじゃあ売店で何か買ってくるから、一緒にお昼にしましょう。」
母はそう言うと、売店に買い物に出て行った。
母がお見舞いに持ってきてくれた文庫本を静かに読んでいると、部屋の外から母の透る声が聞こえて来た。
「あら?もしかしてお見舞いに来て下さった方かしら?せっかくですので、どうぞ中に入って下さい。」
母は外にいる人に声を掛けているようだ。
「まぁ、そんな遠慮なさらずに、せっかく部屋の前まで来て下さったのですから、どうぞ…。」
相手の声は聞えなかったが、(そもそも普通の人の病室の外の声は聞こえない気がする…)母の返事から、誰かが一緒に部屋に入ってくるようだった。
「失礼致します。突然どうもすみません。」
母の後ろから、すっかり恐縮しながら部屋に入って来たのは、
…東山さんだった。




