<第二十三話>二人の関係
「そうね、あなたが経済学部に進学が決まった頃よ。
あなた、あの頃随分悩んでいたじゃない。だからお母さんも、どうしてかなぁって一生懸命考えたのよ。」
母が言った。
「えっ、私の事なの?」
「そうよ。他に誰がいるの?」
「お母さんが自分の事で考えたんだと思っていた。」
「お母さんについて、お母さんが一人でそんなに悩むような事ある訳無いじゃない。」
「…確かに。『大変、大変』って全部その内容を私達に話して、翌日にはすっきりしている事多いもんね。」
「あら?そんなに悩みが無い訳ではないのよ。お父さんとじっくり夜遅くまで相談している事だってあるんだからね。…まあ、私の話は置いておいて。
あの頃、せっかく希望していた学部への進学が決まって喜んでいたのに、その話を明さんにしたら、全然喜んでくれなかったって言っていたじゃない。
そして、その理由を随分考えていたじゃない。
彼が就職活動で大変な時なのに、自分だけ希望通り決まったから…って最初は言っていたよね。
それから、サークルの先輩情報で、実は明さんも経済学部を進学希望していたけれど、希望が通らなくて文学部になっていたって話を聞いてしまった…。どうしよう知らないで彼の前で喜んじゃった…
とか色々言ってなかった?
だから最近会えないんだ。就職活動のせいだけじゃなくって、自分の気が利かないから嫌われたんだって言って、くよくよ悩んでいたじゃない。
お母さん、静が落ち込んでいるから、どうしようって考えていたんだけれどね…
本来、相手に嫌われそうなら、まずその原因となった自分の悪い所を見つけないといけないでしょ。
でも静と明さんの場合は、静が直した方が良い所に原因がある訳じゃないなって考えたの。
静はね、さっき話したお母さんのような立場で明さんと付き合っているのかな?ってその時思ったの。
だからね、明さんはきっと、静と一緒にいる事がとても落ち着く、幸せな場所になっているんだろうなって思うの。
でもね、私はあなたのお母さんだから、静の幸せを中心に考えちゃうの。
だから、あなたがそんな風に自分が悪いことをしていないのに悩むような姿は、あまり見たくないなぁて、実は思っていたのよ。
嬉しい時間や楽しい時間って、恋人だけじゃなく、誰とでも一緒に過ごせるよね。
でも悩んだり苦しんだりして心が弱くなっている時って、一緒にいる人を選ぶでしょ。
そんな時は、自分を守ってくれたり、応援してくれたりする人を無意識に探しちゃうものだよね。
だから恋人や結婚相手は、お互いに助け合える関係じゃないと、どちらかが一方的に疲れる関係になっていくんじゃないかしら?
あなた達の付き合っている話を聞いて、お母さんはそう思っていたの。
今回の事故の話を聞いた時、またそう思ったのよ。
静、あまり自分に無理しちゃ駄目なのよ。」
母が言った。
「…お母さん、それって私が昨日歩きながらずっと考えていた事だよ。どうしてお母さんってそうなの?」
私は母の考えに驚いていた。
「だ・か・ら…、お母さんは静が大好きなの。」
母は笑顔だった。




