<第十六話>赤の他人
母の話題が終わると、少しだけ沈黙の時が流れた。
(明の事、何か変な風に思われちゃったかな?事故に遭う前に一緒にいたから連絡したけれど、明に言われたように、最初からお母さんに連絡すればよかったな…)
こんな風に考えていて、飯野さんにどう話そうかと少し迷っていたが、結局、
「最初の電話、すみませんでした。部屋に彼が会いに来ていたので連絡したのですが、こういう場合、家族に連絡しないといけませんでしたね。」
とそのまま彼に言われた通りに話してしまった。
すると、飯野さんは、
「そうですね。西谷さんには彼氏さんがいるんですよね。」
と言った。
「えっ!?意外ですか?」
私は、少しショックを受けたように答えた。
「あっ、そういう意味じゃなかったんですよ。
今のは、その…、東山さんの事を思い出して、そう言ってしまったという感じで、誤解させる言い方をしてしまって、すみませんでした。」
飯野さんが少し慌てて、訂正していた。
「…あの、実は東山さんから話を聞くまでは、私達は、彼が西谷さんの彼氏さんだと誤解していたんですよ。
西谷さんと衝突しそうになった車の運転手から話を聞き終えた警察の方が病院に着いて、東山さんの怪我の手当が終わるのを待っていたんです。
そして、治療が終わってから、まず事故の状況を聞いていました。
その話は、先程、先生がおっしゃっていましたよね。
次に、まだ意識が無かったあなたの事も彼に聞いたんです。
そうしたら、彼が、
『さぁ、名前は知りません。彼女とは初対面ですから。』
そう答えたんです。
それで、救急車に乗る前に、救急隊員があなたに付き添いの方か確認しませんでしたか?と聞いたら、
『はい、確認されました。
ちゃんと、病院まで付き添わなきゃと思ったので、そうですって答えましたよ。
事故に遭う前、彼女は一人で歩いていましたし、自分のせいで意識が無くなってしまった女性を一人にするのはおかしいと思ったから、病院までちゃんと付き添おうと思ったんです。
すみませんでした。今まで救急車を呼んだ事が無かったので、連絡した自分が付き添うのは当然だとも思っていましたので、そう答えました。
でも今、冷静になって考えてみれば、確かに、知り合いでもない人間が同乗するのはおかしかったですね。』
そうサラっと答えたんですよ。
もうそれを聞いた私達全員、驚いていたんですよ。
あなたを必死で助けて、あなたをかばって怪我までして、病院に付き添ってきてくれていたのに、赤の他人だったんだなぁって。」
と飯野さんが、私が病院に着いた時の東山さんという方の状況をしみじみ話してくれた。




