<第十四話>連絡先
「診察は以上です。ここからは、看護師と変わります。』
と医師が言い、病室を後にした。
病室に一緒に入ってきていた看護師が、私の脇までやって来て、
「大丈夫、疲れていないですか?」
と笑顔で優しく話しかけて来てくれた。
「はい、大丈夫です。よろしくお願いします。」
自分の年齢に近い女性看護師が、笑顔で話しかけてきてくれて、医師の診察中に感じていた緊張感が和らいでいくのを感じながら答えていた。
「それでは、最初に入院カードを作成しますので、記入していただけますか?」
と言いながら、バインダーに挟まれた入院カードとボールペンを手渡された。
私は、氏名・年齢・住所・電話番号を記入して、看護師に返した。
「どうもありがとうございます。それじゃあ、十時で少し遅い時間帯ですが、緊急事態ですし、今からこちらに連絡しても大丈夫ですか?」
とカードに記入された電話番号を指差しながら確認された。
「あっ、はい、どうぞ。」
私は、看護師さんが隣で電話を掛けているのを見ながら、考えていた。
(まだ終電まで時間もあるし、ケンカした直後だから、明、私の事を心配しながらまだ部屋で待っているかな?でも、病院から急に連絡がきたら、驚くだろうな…。)
「留守電に切り替わりました。」
看護師が答え、電話を切った。
「あっ、すみませんでした。もう出てしまったのかな?すみません、携帯に掛けてみますので、電話をお借りしてもいいですか?」
私は、看護師から電話を借りて、明の携帯に連絡をした。
「はい?」
明は、見知らぬ番号からの電話に警戒した声を出していた。
「明、私静だよ。」
明の警戒を解こうと、まず名乗った。
「静なのか?この電話何処から掛けているんだ?あっ、今部屋電話が鳴っていたのも、もしかしてお前が掛けていたのか?」
明が少し驚きながら答えていた。
「えっ、明、部屋にいたの?じゃあ、出てくれればよかったのに。」
私は、明がまだ部屋にいた事に少し驚きながら答えていた。
「そんな、親からだったらどうするんだよ。出るわけがないだろ。」
明が言った。
「…ごめん。あのね、今病院の電話から連絡しているんだ。」
「病院?お前どうしたんだ?」
明が慌てていた。
「…交通事故に遭いそうになったの。
さっきは、看護師さんが、私の事を知らせようとして部屋に掛けていたんだ。」
私は答えた。
「なんだよ、それじゃあすぐ家に連絡しなよ。僕に掛けたってしょうがないだろ。」
明が答えた。
「あっ、そっか、そうだったね。」
明の答えを聞いて、そう答えた。
そう言われれば、そうだ。…でもなぜだろう?ひどく落ち込んで涙が出そうになっていた。




