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未来

※注意事項


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


社会人で投稿スピードは遅いと思いますが頑張って書いていきます!

 冷たい空気が頬に触れる。

 長すぎる間、息をしていなかったせいか、呼吸をする度に肺が軋むように痛む。


 どれだけの時間を眠っていたのだろうか。

 惰眠を貪ってしまう昼寝のような短い時間感覚しか感じていない。


 手は動く。


 足も動く。


 大丈夫だ、何とか死んではいない。


 混濁する記憶の中で地面に膝をつき、自分の置かれている状況に思念を向ける。

 無機質は床は僅かな冷たさを残して、膝から体温を奪っていた。


「少しだけ、頭が痛いな」


 ボソボソと発した声に懐かしさを感じた。

 喋ることは出来ているようだ。


 額に手を当てながらおもむろに立ち上がる。


 そうだ、服を着ていなかった。何か着る服を探そう。


 そんなことを考えながら、前方に視界を向ける。

 僅か数時の間。






 目の前には、みすぼらしい服装の少女が震えながら、こちらを見つめていたのだった。





 ----○○○----




 XXXX年。

 この星は地球と呼ばれている。


 かつては緑の自然と青い水に囲まれた生命の輝く綺麗な惑星であった。


 動物達は多種多様に進化をし、神から与えられたであろう命を限りなく過ごしていた。


 人類もまた、類に漏れずこの星の理に従っていた。


 しかし、人は自らの生活を豊かにするために様々な犠牲を払い文明を起こし、発展を繰り返した。


 人口爆発と共に地球を開拓していき、木々を切り開き、居住地域を増やしていった。


 化学が進歩する度に水質が汚染され、海は死んだ。


 疲弊していく地球で暮らしていくために更に化学技術を高め、自然を破壊しつくしても人類は生きていく事が出来るまでになったのだ。


 だが、いつしか終わりは来る。


 人類の犠牲になった生き物達の呪いなのか、はたまた、地球を破壊し尽くした人間達への神からの裁きなのかは分からない。


 人類の滅亡までの時間は残り少ないだろう---。


 そこで本を閉じた。


「人類の滅亡ねぇ、言い得ているな」


 今から100年前に書かれた本の内容からするに、人類は大分生きながらえていると感じた。


「でも、人類文明も今日が最後か」


 ベットの上で読んでいた本を脇に置き、深呼吸をした。すると、コンコンと部屋をノックする音が聞こえてきた。


「シャロン様、お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」


 部屋の外から、女性の声がする。


「あぁ、入って来ていいよ」


「では、失礼します」と一言添えて、声の発生源が中へと入ってきた。


「T-230、いつも勝手に入ってきていいって言ってるじゃないか」


「申し訳ございません。そうプログラムされているため…」


 声は人間と同じであるが、目の前にいるのは無機質な機械である。


 カメラレンズの絞りを小さくしたり、大きくしたりと表情が豊かではあるが。


 空中にどうやって浮いてるかは分からないが、両端から出ている2本のアームを上手いように動かして、ジェスチャーをしている姿はさながら人間のようである。


 人はみな、生まれた時から政府により自分専用のアンドロイドを与えられている。


 使い方は人それぞれだが、雑用を任せる使用人として使う者も居れば、何でも気さくに話せれる友達として扱う者もいる。


 俺は断然、後者の方だ。


 彼ら、彼女らは政府直轄のメインサーバーと直結しておりビッグデータから情報を共有している。出来ないことはなく、知らないことも何も無い。


 これが、1人1台与えられるんだから凄い時代になったものだ。


「シャロン様。先程からボーッとなされてどうされましたか?」


 T-230は機体を少し斜めにさせて、疑問を抱いている。


「すまない、少しだけ考え事をしていた」


「そうだったんですね。考え事の邪魔をして申し訳ございません」


「いいんだ、気にする事はないよ。それより何の用だい?」


 俺は話の道筋を元に戻した。


「政府から避難勧告が発令されております。《特定者は直ちにコロニーへ移動せよ》との事です。シャロン様もお急ぎを」


 コロニーへの避難命令か。人類滅亡までに時間がないみたいだ。


 この星は死んでいる。増えすぎた人口と汚染された環境は着実に人類を蝕んでいた。


 人は半永久的に壊れない物質、通称ナノクロームを開発した。それは有限物質を使い果たして枯渇させた人類の希望の物質であったのだ。


 それにより、建物から機械から何もかも全てをナノクロームで補い始めた。


 しかし、永久的に壊れないということは、廃棄することが出来ないの裏返しであったことに気づくことが出来なかった。


 結果として、地上には廃棄することの出来ないナノクロームが溢れ返り、更に人類の滅亡の時間を早めていったのだった。


 そこで、政府は苦渋の決断に至った。


 《人類移住計画》と《人類再生計画》


 人類移住計画とは人工飛行惑星アーティアに人々を乗せ、人類が住むことの出来る別の惑星へと移動する計画である。


 既に移住先は決定しているが、その星に着くためには数千年の時間がかかるという。


 しかし、人工惑星は数千年の歳月を耐えうるだけの環境を有している為、問題は無い。


 ただし、アーティアには乗れる人数に制限があるため人々は選ばれるのをただ祈るしか出来ない。


 もうひとつの人類再生計画は、地下深く環境汚染が浸透していない空間に人間の居住区コロニーを建設し、コールドスリープ装置の中で眠りながら過ごすという計画。


 政府は地球をリセットしようと考えている。


 化学兵器を使い地上を跡形もなく消し去り、1からやり直す。


 そして、長い時を経て地球が生命溢れる惑星になった頃に目覚めて、再び文明を再構築するというもの。


 何とも身勝手だが、これしか方法がないほどに人類は追い詰められていたのだった。


 しかし、この人類再生計画にも定員があったのだ。


 つまり、アーティアにもコロニーにも行けない人々はただ滅びゆく星の元で死に絶えるしかない。


 政府からのメッセージは選ばれたものにし送られていない機密情報の為、漏らそうとすれば消される。


 その故、この星が死ぬことを人々は知らないのだ。


 そして、俺は選ばれた。


 人類再生計画の方で。


「シャロン様、早く準備をなされて下さい。この星はあと3時間後に死に絶えます」


「あぁ、分かっている。そして、T-230。君ともここでお別れだ」


 コロニーにはアンドロイドを持ち込むことが出来ない。コロニー内での反乱を避ける為の措置だ。


「お前の機能を停止させる。今までありがとうな」


「シャロン様に出会えて私も幸せでございました。どうか、忘れないでください」


 悲しげに言う彼女に俺はそっと抱きしめ、メインスイッチを切った。


 動かなくなったT-230から彼女の自我の源であるコアチップを抜き取り、首からぶら下げていたネックレスの中にしまった。


 持ち物はさして必要ないだろう。


 どうせコロニーについてもあとは寝るだけなのだからと考え、T-230のチップ以外の持ち物を持たずにコロニーへと向かった。




 ----○○○----




 政府から指定された場所に赴き、身体検査がなされたあと、エレベーターに案内されて地下深くへと進んで行った。


 その間、目隠しをされていたためこの場所がどこにあるのかは知る由もない。


 コロニーの入口に案内された俺は重厚な丸い扉の前で待機させられていた。


 俺の他にも多くの人がいる。ざっと千人はいるだろうか。来たの俺が最後の方だったらしい。


 人々がザワザワと騒ぎ立てる中、前方の方に政府の職員達が並んでいる。


 そして、その中を1人の初老の男性がカツカツと靴を鳴らして前に立った。


「諸君、私はこのコロニーの最高責任者である。リルゲンだ。以後お見知り置きを。さて、君たちはこの人類再生計画に選ばれた。我々に与えられた責務は地上で滅んでいく同胞達の悲願である輝く生命で溢れる地球に行くことである。私たちの他にも、100ものコロニーがこの星のどこかに点在している。私たちはこれから新しい人類へと進化するのだ」


 声高らかに宣言した最高責任者リルゲンの声に扇動され、コロニーいる人々も歓声をあげている。


 その時であった、地下深くにいるのにも関わらず凄まじい爆音が上から鳴り響き、とてつもない地揺れを感じている。


「人類再生計画が始まった。地上は火の海と化しているだろう」


 リルゲンがなんの躊躇いもなく言い放つ。


 俺は生きている。しかし、地上にいる人々はこの瞬間にもなんの意識も感じずに一瞬のうちに死んでいると思うと言いようもない悪寒を感じた。


「ここにいては何かと危険だ、我々はコロニーの中へと入るとしよう」


 リルゲンが命令を下すと重いナノクロームで出来た頑丈な扉がゆっくりと開き、中へと我々を誘っている。


 先頭の人達から順にコロニーの中へと入っていく。


 コロニーの中は広大な空間が広がっていた。


 地上にいた頃は感じられなかった新鮮な空気。


 無機質な空間ではあるが、ここで暮らして行くには十分過ぎるほどの施設が揃っている。

 大型の食堂、医療施設、武器庫、シャワールームなどなど、贅沢過ぎるほどの暮らしが出来る。


「ここでの施設は保険だ。万が一、我々が目覚めた時に地球が復活していなければここで暮らしていくしかないからな。今、目を輝かせていても使えるのは数千年先だ」


 リルゲンの発言の通り、我々はこれから長い眠りにつくのだ。


 コロニーに対する一通りの説明を職員達から受けた後に、コールドスリープ装置がある施設へと案内された。


 コールドスリープ装置はポットような作りになっており、中には個体にも液体にも似たような物質が満たされていた。窓は着いているものの中の様子は外側からしか見ることは出来ない。棺桶のようだ。


「服を脱いでからこの中に入ってください。心配しなくても息は出来ますから、御安心してください」


 職員に促されるまま、自分が持っていた手荷物と服をコールドスリープ装置の横にあるボックスに収納し、鍵をかけた。


 そして、生命維持装置の中に入った。


 スライムのような物質に飲み込まれながらも息が出来る環境に戸惑いながら、目を閉じた。


 深い眠りにつつまれ、意識が途切れたのだった。





 

 そして、人類はこの世界から姿を消したのである。










○地球

高度文明により、汚染された惑星。

地表は半永久的に壊れないセラミックのような物質の残骸と建物に覆われ、人類は人口食物を培養し、暮らしている。

海は干上がり、自然は消え失せ、生命は人間以外には存在しない。


○ナノクローム

人類が開発したセラミック調の物質。

人間の細胞と同じように新しい分子を自ら作り出すことにより半永久的な強度と性能を実現させた。

加工するのは容易だが、処理することが出来ず、地表に投げ捨てられている現状である。


○コロニー

《人類再生計画》の為に作られた施設。

人間の一時的な避難場所でありながら、ここで暮らしていく事が出来るほどの設備を揃えている。

全世界に100基程のコロニーが点在している。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

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