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第九十一話
薄く切れた段蔵の肩から血が滲み小袖と合羽を赤黒く染めた。
「虎千代」
段蔵が心配そうな細い声を漏らした。
「うあーーーーーーー」
虎千代は獣のような咆哮を唸らせ、鬼斬り丸を振り上げて大岩に打ち付けた。
キーーーーーン
澄んだ高い音が祠に響き渡る。
「どうした虎千代?憎いのだろ。殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ!」
鬼斬り丸は虎千代の心胆を追いこむように連呼した。
「あーーーー。ぐあーーーー」
生々しい幼き頃の記憶の断片が、虎千代の脳内を破壊する。虎千代は、嗚咽混じりの奇声を上げて、鬼斬り丸を持つ手を振りまわした。
「嫌―――――」
虎千代は鬼斬り丸を両手で握りしめ刃先を己が首に宛がった。
「虎千代――――――」
朦朧とした意識の中で段蔵は声の限り叫んだ。




