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第八十八話
場面が切り替わり、静けさが辺りを包み、揶揄の喧騒から解放された。
目の前に泣き崩れる虎御前が現れた。
「どうして虎千代が……私は鬼子を産んだというの?恐ろしい、あんな子、生まれてこなければよかったのに」
虎御前は手にした朱塗りの盃をぽとりと落とした。
「違う。違うの。ただ私は母様に笑っていてもらいたかった。それだけ。母様に抱いてほしかった。それだけなの……いゃーーーーーー!!!!!」
虎千代は苦悶の表情を浮かべて頭を抱え、擡げた頭を急に振り上げて傍らの岩に勢いよく打ち付け始めた。




