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第八十二話
段蔵は立っていられなくなり祠の岩壁にもたれ、背を引きずるようにして地べたに腰を下ろした。
「ほほう。人間か。これは、珍しい」
突然、剣が虎千代の脳内に話しかけた。
「お前の望みは何だ」
「あなたを僕の家臣にしたい」
虎千代が凛と答ると
「ひぃぃひっひぃぃ!」
剣は甲高い卑屈な笑いを放ち、
「俺様を家臣にだと?寝言は寝て言え。このわしを、この鬼斬り丸を家臣にできる人間なぞいる訳がない。能書きはいい、早く俺様をこの結界から放て、お前の望みは何だ、殺したい奴がいるんだろ、憎いやつが」
「そんな人はいない」
「ははははは」
鬼斬り丸は高笑い、
「そんな人間はいない。憎悪と私利私欲に塗れて醜悪に生き恥を晒しながら生きながらえる存在が人だ。」
威圧的な声に変調させて言った。




