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第七十八話
― では何故?傷が消えているのだ ―
滝壺に目を落として自問自答した。
水面に映る己が顔を見て左目が無いことに気づいた。
段蔵が左目にそっと触れていると後方から虎千代の声が聞こえた。
「目は駄目だったみたい。無くなっちゃったものは元に戻らないみたいだね」
虎千代は少し暗い顔を浮かべて段蔵に言った。
「だが他の傷は治っている。何をしたのだ?」
「分からない」虎千代は首を振った。
「段蔵さんが震えていて、温めなきゃって。そしたら、段蔵さんの傷が癒えてたんだ」
虎千代が口を尖らせて言うと
「面妖なこともあるものだ」
段蔵が顔をひそめた。




