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第七十五話
冷たい水が喉を通過する。
気持ちいい。そう思った瞬間、段蔵は、覚えの無い感触を唇に受けていることに気づき、目を開いた。
虎千代の顔が面前に現れた。
驚いた段蔵は反射的に虎千代から身を避けた。
「貴様、何をした」
凄む段蔵に虎千代は平然とした調子で
「水を飲ませてたんだよ」
「どうやって!」
段蔵は顔を赤らめて虎千代を問い詰めた。
「どうやってって、口移しでだよ。だって段蔵さん竹筒口に付けても飲まないんだもん」
「だけど、お前……」
「段蔵さん、目を覚ましたんだね。よかった~」
狼狽する段蔵を無視して、はじけるような笑顔を虎千代が浮かべる。
「……初接吻だったのに」
段蔵が小声でひとりごちていると、虎千代が段蔵の顔を覗き込んだ。




