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第六十五話
「光育様のね~」
勿体ぶる虎千代の話し方に痺れを切らせて、段蔵が立ち上る。
「何だよ、答え訊きたくないの?」
「喰ったんだろ。もう寝るぞ」
段蔵はぶっきらぼうに応えて、虎千代に背を向けた。
「段蔵さんの父上や母上はどうしてるの?」
虎千代が焚火に薪をくべながら訊いた。
「いくさで死んだ」
段蔵は背中越しに一言だけ零した。
虎千代は立ち上がり、ふと頭の片隅をよぎった、自分でも驚くような言葉が口をつく。
「戦の無い世の中になったら、段蔵さん嬉しい!?」
風でざわめく木々たちに紛れない声が、夜の闇に広がる。
段蔵は歩みを止めて振り返り、どうとも取れるような笑みを零して静かに首を縦に振った。
その面差しは穏やかで優しく、でもどこか淋しそうにも見えた。
柔らかな月明かりに照らされた段蔵の姿に虎千代は見惚れていた。
立ち騒ぐ胸の内を虎千代は必死に抑えていた。




