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第六十四話
虎千代はふんとそっぽを向いて、天を仰ぎ今にも落ちてきそうな星たちを凝視する。
「……僕は誰からも愛されてないんだ」
流れ星が天空を走ると同時に虎千代の頬にほうき星が伝った。
段蔵は身を焦がされて頃合いになった岩魚を焚火から取り出し「もっと喰うか?」と虎千代に差し出した。
「うん」
虎千代は涙を拭って力強く頷いた。
「光育様は凄い人で尊敬してるんだ。他の小坊主と同じように僕に接してくれるし、優しいんだ」
手を打って光育の話をする虎千代の顔から、先程見せた陰影は消え失せていた。
「僕、光育様の秘密知っているんだ?」
「何だ?」
虎千代は興味なさげに訊く段蔵の顔を覗き込んだ。
「聞いてる?」
「聞いてるよ」
顔の近い虎千代に段蔵は少し照れながら体を反らして答えた。




