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第六十三話
パチパチと焚火がはぜる。七歳で寺に入門したこと、それまでの記憶がないことを焚火の炎で頬を赤く染めながら、虎千代が段蔵に話した。
「だから僕は控え選手なんだよ。ことが起こらなければそれでよし。兄上に何かあればその時はってね。しかたなしに……」
虎千代はぽつりと零し、手にした小枝で薪をいじって煙を吐き出させる。
「仕方なしに?」
黙って虎千代の話を訊いていた段蔵が訊き返した。
「うん。父上は僕が出家してから一度も会ってくれないし、家中の者も腫物に触るようにしか僕に接してくれない。……母上だって」
「虎御前様がどうかしたのか?」
「……僕と会うとき、どこか、怖がっているような気がするんだ」
煙越しに、虎千代の悲しげな顔が揺れる。
「怖がる?自分の娘に会うのにか?」
段蔵が首を傾げた。
「僕は男だ」
虎千代が頬を膨らませた。
段蔵はあいまいに頷き、謝るように軽く片手を振った。




