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第六十話
段蔵は膝ぐらいの深さの場所で立つと水面を凝視し静止した。
「銛も無いのにどうするのさぁ」
虎千代が巨石を背にだらしなく腰を下ろしたまま段蔵を罵倒している。
段蔵は虎千代を睨みつけ人差し指を口元に立てた。
虎千代はため息を漏らして茫然と段蔵を眺めた。
水面を見詰めたまま凝固していた段蔵が少し動いたような気がした。
虎千代は岩が昼間に吸い込んだ日の温もりを背で感じながら、腹の虫の合唱を聞いていた。
「投げるぞ」
段蔵の声が聞こえたかと思った瞬間顔に何か冷たいものが当たった。




