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第五十四話
虎千代が軽業師の様に空を舞う段蔵に見とれていると、山伏の一人が虎千代の襟首を掴んだ。
「何するんだ!放せよ。僕だってやる時はやるんだからな」
虎千代は山伏の腕をポカポカと殴ってやったがビクともしない。
山伏に持ち上げられ虎千代の足が浮いた。
「こら、放せって言ってるだろ!」
足をばたつかせて抵抗したが地面から体がみるみる離されていく。
「もう、こうなったら本気出すからね」
虎千代は山伏の腕を両手で掴み、引き離そうと顔を赤くして腕を伸ばす。
襟首を掴む山伏の力が急に抜け落ち、虎千代の尻が地面に激突した。
「痛って~。ほら見たか、僕の本気を」
嬉々として万歳する虎千代の手に、重みがかかる。
虎千代が突き上げた己が腕を見上げると、胴体から切り離された山伏の腕だけが虎千代の手にしかと握られていた。




