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第五十話
段蔵は平静を装い
「そうか」
とだけ言って、虎千代に背を向けたまま湯から上がり脱衣所に向かった。
段蔵は部屋に戻ると宿主に頼んで衝立を貸してもらい部屋を二等分して布団を敷いた。
虎千代は段蔵の心遣いに首を捻ったが段蔵の眼光に何も言えず、布団を被って寝た。
灯を落とした部屋で段蔵は一人感慨深げに闇を凝視していた。
家中で『姫若』と揶揄されていた虎千代の美男子振りは噂で知っていた。
確かに坊主頭だが顔の作りは尋常ではないほど美しい。
寺で初めて虎千代を見た時、衆道の趣味がない段蔵でもドキッとしたほどだった。




