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第四十五話
時間が少し早かったこともあって、脱衣所には誰もいなかった。
段蔵は手際よく旅装束を脱ぎ捨てて、岩風呂に身を沈めた。
少し遅れて虎千代が高調した声を上げて浴室に入ってきた。
「わぁ~。お風呂広~い。スゲー。スゲー」
心弾ませ、右に左にと動き回る虎千代のこじんまりした白い尻を湯煙越しにチラと見て、段蔵はフンと鼻を鳴らした。
虎千代は一通りはしゃぎまわった後で湯に浸かり、嬉々として段蔵の傍らまでやってきた。
「これが温泉ですか?僕初めてです。林泉寺のお風呂と違って勝手に湯が出てくるんですね。びっくりしちゃった」
「温泉なのだから当然だ」
段蔵は憮然と言って、埃っぽい顔を湯で洗った。




