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第三十三話
虎御前は庵に戻ると、すぐさま一人の男を呼び寄せた。
男の名は加当段蔵。『飛び加藤』と忍び仲間からも怖れられる男だった。
段蔵の才覚は十六と言う若さにも関わらず、長尾家お抱え忍者集団軒猿の中でも群を抜いていた。
残忍、暴虐さに加え冷静沈着さを兼ね備え、どんなに困難な任務も確実に完了させた。
敵にしたらこれほど怖い忍びはいないと、主である為景も常々漏らしていた。
虎御前は段蔵に光育からもらった洞窟への地図を手渡し、虎千代が人を殺したら首をはねろと命じた。
段蔵は奥に闇を宿した切れ長の目で虎御前を冷やかに見つめ、静かに頷いた。
頼む、と頭を垂れる虎御前を残して段蔵は音も立てず姿を消した。




