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第三十一話
「私の霊力もこの五年ですっかり衰えた。虎千代殿の力を抑制するのに使い果たしてしまいました。もはや、鬼斬り丸の霊力に耐えうるだけの力は残っておりますまい。虎千代殿には己の力で鬼斬り丸と対峙して頂き、飼いならして頂かなければなりませぬ」
「飼いならす?」
虎御前は不可思議な顔を浮かべた。
「そう、飼いならす」
光育は神妙な面持ちで頷いた。
「鬼斬り丸は幻覚を見せ、手にしたものを惑わせる。時には快楽に溺れさせ、時には目を伏せたい過去を走馬灯のように再現し気を狂わせる。幻覚や幻聴に恐怖し、鬼斬り丸に心奪われしものは、人の血を望み、最後には自害に及ぶと伝えられておりまする。幻覚に打ち勝ち、鬼斬り丸と契りを結ぶ」
「契り?」
食い入るように光育の話を訊いていた虎御前が眉をひそめた。




