表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国鬼  作者: 騎士理 徹 (きしり とおる)
3/388

第三話 

菜食を絶ち幾年月が経ったのか見当もつかない。深閑とした厳粛な時間の中に体躯を横たえ、唯一己の意志に従う右側の眼球だけをうろつかせる。肉体は朽ち、蛆が全身の至るとこで蠢いている。一切の光が閉ざされた土石の中で腐りゆく我が身。それが厳然として目前にある現実。空腹を満たすために喰った両腕は、既に白骨化している。こんな姿になっても途絶えることのない己の生命力が恨めしい。過酷な訓練の賜物か。口唇はとうに腐敗し、剥き出しになった歯茎でにやりとやり場のない笑みを零す。微笑む口元が妙に艶めかしく、怪しい色香を放つ女のことが、見るに堪えない醜悪な姿となった今でも、脳裏に焼き付いて離れない。彼女の透き通った肌の感触を思い出しては、噴出す怒りと情愛が膨張し、僅かに残存した血潮を沸騰させる。天の岩戸のように、固く閉ざされた、不可侵な彼女の心中に入り込んだ人間は俺しかいない。そう自負している。突出し垂れ下がった眼球を揺らしながら、彼女の温もりを思い出す。俺が生きてきた道程のいたるところに、彼女の痕跡が刻み込まれている。理屈や言葉では表せない、脳漿ではもはや判別できない愛だった。彼女を思い、我が身を省みて、暗澹たる思いに襲われては、悶え苦しむ。悶絶し暗く沈んだところで、どうにもならない。俺は形容できないほどの狂気にも似た愛を抱きながら、只々こと切れる瞬間を待っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ