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第二十二話
虎御前は為景の言いつけを破り、忍ぶようにして春日山城下に足を運んだ。
目的の寺門の前で虎御前は周囲を注意深く見渡す。
誰かに見られてはいまいかと警戒を強め、寺門を潜った。
林泉寺の天室光育に虎御前は虎千代のことを相談しに来たのだった。
光育は天台宗を始めとした日本古来の経典だけでなく、真言密教や道教にも精通していた。
その知識は天文学、古語、薬学、錬金術、数学、文学、医学等々留まること知らず。
見識の深さから賢人として為景のみならず、他国からも領主達がこぞって光育に教授を受けにくるほどだった。
また、光育は妖術、幻術、呪術などを自在に操る類稀なる霊力で高名だった。




