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第十九話
二刻ほど経った頃、虎千代がけろりとした様子で庵に帰ってきた。
虎御前は虎千代の姿を見て絶句した。虎千代は頭の先から夥しい血を浴びたような姿で帰ってきたのだった。
「神様殺してきたよ」
真紅に染まった顔面から白い歯を覗かせて、虎千代が満面の笑みを浮かべた。
虎御前は他の者に虎千代の姿を見せまいと着物で血だらけの我が子の姿をかくし、虎千代の着物を脱がせて井戸へと急いだ。
血を水で洗い流し、虎千代の着物は庭先に埋めた。
これだけ血を浴びているというのに、不思議と虎千代の体には傷一つ見つからなかった。
虎御前は虎千代に誰の血を浴びたのかと問いただしたが、虎千代は「神様だよ」と悪びれもせず言うばかりで的を得ない。




