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第十八話
虎千代は、虎御前の腕の中からするり体を抜いて立ち上がった。
「じゃぁ。虎千代神様殺してくる、神様が死んだら母様嬉しい?」
小首をかしげる虎千代に虎御前は苦笑した。
「虎千代、神様は死なないの。だから神様なのよ」
虎御前が虎千代を諭すと虎千代は不敵な笑みを浮かべ
「虎千代なら殺せるよ」
蝋燭の火で顔を揺らす虎千代の顔は夜叉のようだった。
虎御前の背中にぞくりと悪寒が走る。
虎千代は踵を返して裸足のまま庵の外に出て行った。
もうすぐ夜が明ける。大人の脚でも春日山城までは二日はかかる。
近所を歩きまわってすぐにでも帰ってくるだろうと、虎御前はたかを括って気にも留めなかった。




