15/388
第十五話
虎御前は夜遅くだというのに眠れずにいた。
日ごとに起きる家臣たちの死が自分に関係しているのではないかと、心病まない日が無い。
中庭に出て縁側に座った。
朧月が春の風を運んでいる。
月から庭池に目を落とすと、半月が映しだされていた。
月明かりに黒く浮かんだ人影が虎御前の目に入った。危うく声を上げそうになったが、寸前で声を殺した。
影は幼く大人のものではなかった。
風が止み木々の吐息が止まる。
風もないのに幼い影の長い髪が生き物のように蠢きながら逆立つ。
目を凝らすと小さな影は池に入っていった。虎御前は、息を呑んで影を目で追った。
月が雲に隠れ漆黒の闇が辺りを包む。
次に月が顔を出した時には影はすっかり姿を消していた。
虎御前は安堵の息を漏らすと共に、胸の奥で言い知れぬ靄が広がった。




