143/388
第百四十三話
「景保、景房同様ぶち殺してやるわ!」
「は!」
家臣は急いで、秀忠の前から立ち去った。
早馬を飛ばしてきた秀忠の家臣は、廊下を駆け、辺りを見渡して人影がないことを確認すると、裏庭に降り立ち床下に潜った。
甲冑姿から黒装束に着替えた段蔵が、床下から現われた。
「これでよし」
段蔵は得意気に両手の土を払った。
跳躍し二間以上ある城壁を乗り越えて黒滝城を後にした。
「……為景様」
秀忠は暗く沈んだ目を足元に落として独り語ち、少しの間を置いた後、深く長い溜息を吐き、迷いを断ち切るように大きく頭を左右に振って、凛と顔を上げた。固く口を結び、目を吊り上げて秀忠は甲冑の重く鈍い音を掻き鳴らした。
「打って出る!城門を開けぇぇぇぇぇい!」




