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第百四十話
「段蔵いるか!」
大きく揺れる馬上で景虎が叫んだ。
「は!」
頭上で段蔵の声がした。
段蔵は爆走する放生月毛の馬速に合わせて、木々を飛び移り、景虎の後を追っていた。
「秀忠の首を取る」
景虎は怒りで唇を震わせた。
「しかし、黒滝城は黒滝要害と言われるほどの城です。そう簡単には……」
段蔵が枝々を飛び移りながら、景虎に進言し掛けたところで、景虎はにやりと含み笑いを零した後、だらりと肩の力を抜いて、相好を崩した。
「だからぁ、段蔵さんにぃ。秀忠を城から出してもらおうかと思って」
「なんと!」
段蔵は驚いて声を裏返した。




