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第百十話
「だが、そんなに卑下することはない。なにせお前は、為景の子種じゃないのだから」
穣姫は薄く笑って、景虎を見下ろした。
「いくら叔母上でも、戯言は許しませぬぞ!」
景虎が怒りで声を震わせた。
「戯言ではない。こと実お前は、我が妹豊姫が、為景殿と夫婦になって直ぐに生まれ落ちたではないか」
「嘘だ!」
「嘘ではない。虎御前に訊くがよい」
「……そ、そんな。……嘘だ」
「お前は、幼い頃、罪もない側室たちや民草を殺した。虎御前は隠し通したが、為景殿は、黒い噂に苛まれ、気を病んでしまわれた。お前が為景を殺したんだよ」
「……嘘だ」
「誰からも愛されず、奇異の目に晒されてお前は城にいたんだ。実母である、虎御前でさえ、お前に恐怖し、畏怖を抱いておる。お前は、生きていても仕方のない存在なんだよ」
穣姫は薄ら笑いを浮かべて、景虎をなじる。




