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第百九話
ヒラリと穣姫は景虎の攻撃をかわし、足元の覚束ない景虎の背中に手刀を喰らわせた。
景虎は力無く、その場に倒れ込んだ。
「何をとち狂っているのやら。この叔母を殺そうなんて、天地がひっくり返 ってもあり得なくてよ」
景虎が怒りを滲ませた目を向ける。
「もし、お前が私を殺せたとしても、悲しむのはお前だけどね」
「どう言うことだ?」
「私が死ねば、虎御前も必然的に死ぬからよ。私たちは裏と表。一蓮托生なの」
「狂ってる」
「あら、結構な言われようね。狂ってるのはどっちかしら。一目瞭然だと思うけど。父殺しと言えども、お前は我が可愛い姪っ子。為景殿が死のうがどうしようが私には関係の無いこと。むしろ、お前のお蔭で私は早く自由になれたのだから、感謝しなきゃね」
「僕は何も……」
景虎の力が抜け、両膝を地面に打ち付けた。




