10/388
第十話
為景は国に帰ると、その少女を血眼になって家臣に探させた。
行方知れず、為景は途方に暮れていた。
会えぬと思えば思うほど、胸が詰まり、情愛の深淵に沈潜していった。
父能景の葬儀で奇跡が起きた。恋い焦がれた少女が目の前に立っていた。
その娘は、為景の府中長尾家の分家筋にあたる、上田長尾家当主長尾景隆の娘、豊姫だった。
探し人が存外近くにいたのだと、不覚にも為景は厳粛な父の葬儀で声を上げて笑うのだった。
幾ら本家の当主に望まれたとは言え、四十を前にした為景に十五を迎えたばかりの娘を後室にやるなど、と豊姫の父景隆は最後まで首を縦に振らなかった。
が、執拗なまでにせがみ続ける為景にこれ以上拒否を続けることは、本家に弓を引くのと同じぞと、凄まれ、止む無く了承せざるを得なかった。
豊姫は為景に嫁ぐにあたって、一つ条件を出した。至極仲の良い姉である、穣姫も共に娶って頂きたい。




