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「魔法少女…?」
あまりに聞き慣れない言葉に頓狂な声で反復した傀にはもう普段のような冷徹な姿は見られなかった。尼崎の「そうさ、魔法少女だ」という返答で自分の聞き間違いではなかったことを認識した傀は今度は沈黙を返した。
続きを促すような傀の目を見据えながら尼崎は今までになく真剣な口調で話を始める。
「わかりやすい言葉で例えるなら、【天使】に近いのかもしれない。だが空想の存在である天使と違って魔法少女は実際に我々の観測内にいる」
あまりの突拍子のない話の切り出しにまたも傀は動揺を隠せずにいたが、尼崎はそれをこれまでのように茶化すことなく話を続けた。
「天使って言うと、神の御使いで人間を良い方向へ導く存在をイメージするかもしれない。だが俺の言う魔法少女ってやつはもっと漠然とした…宇宙の意思って言えばいいのか…そういう概念の使いとして俺たちに接触してきたらしい。名前が魔法少女なのはそいつらが例外なく幼い女の容姿でアニメに出てくるような服に見えるものを着ていたからだ」