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ある裏麻雀界において一際有名な打ち手がいた。
本名は誰も知らなかったが、周りは畏敬の念を込めて「傀」と呼ばれていた。
傀は麻雀以外何も知らない。彼にとって麻雀が全て。他の愉悦には一切興味を示さない。
「ロン....」
傀はいつものように行きつけの雀荘「ジャングル小林」にいた。
当たり前のように満貫8000点をむしり取った刹那、入り口のドアが開いた....
「よぉ、ここに有名な打ち手がいるんだってなぁ.. サシウマ握れよ」
周りの目を気にも留めず一直線に傀のもとに近づいてきた。
傀とその男の距離が1mに近づき相対する。
周りのギャラリーもはやし立てる中、傀は口を開いた。
「点100、それ以下は認めない。」
「ノった。」
雨の降りしきる6月の深夜、
この闘牌こそ、傀が力倆に目覚める序章であった。