「利用された池尻明子」プロローグ
今までは何かの大賞へ応募して落選した作品を書き直して投稿していましたが、今回の作品は完全にいちから書いております。
ですので、前回よりもさらに不定期な更新になると思われます。
もしお待ちいただけましたら幸いです。
(プロローグ)
体のあちこちをぼりぼりと掻きながら話す小太りの男と、戸浦守人は日本有数のオタク街で電気街にある公園で立ち話をしていた。
小太りの彼と守人とは小学生低学年以来の付き合いで、小太り君は小学校五年から不登校になり、外出は守人と電気街へたまに繰り出す以外ほとんどない。
「あの大統領とうちの首相の相性はどうなんだろ吸われるだけ吸われてなにもくれないきがするんだよねでもそのなかで上手く立ち回れれば得るものは大きいと思うのだけど首相が機敏に感じ取れるとも思えないから官僚の意向が大切でその瞬間の大事なタイミングとか逃しそうだよね官僚がかんがえてるのは・・・」
小太り君との会話は守人が聞き手になって、半年から一年貯め込まれた情報を浴びる形が常だった。
守人はなぜ小太り君に付き合うのかと言うと、新聞をノートに書き写して育った守人にとって小太り君の話は聞いていて楽しかったと言うのと、母同士の仲が良く小太り君の唯一の友達だった守人にたまにでいいから遊んであげて欲しいとお願いされていたからだった。
「いまの官僚が昔の官僚のようにしたたかだったらとおもうのだけど・・・そういえば、と、と、戸浦君の学校大変だよねあのビデオは、ふふ、ちょっとマニアック過ぎだけど好きな人にはたまらないと思うよぼくはそんなにだけど、とと戸浦君も、みみた?」
「ビデオ?」
「ああ、こんな話自分ととと戸浦君の話では出すべきじゃなかったわすれてかんりょうのはなしだった」
「いや大丈夫、逆に興味あるよ。良ければ教えてくれない」
「すこし、その、エッチな話だけど・・・」
極度に他人との会話が苦手な小太り君は、守人が静かに聞いている事が普通で話に食いついて来ることが極端に少なく、守人がどう感じているか分からず恐る恐る話を続ける。
「興味本位でフェチを語る掲示板を覗いたときに陸上部の女子たちが練習している動画が見つかって前後の書き込みを見ると文武大付属の陸上部の女子だってわかってでも文武大は敷地も広いし警備もしっかりしてるからどうやってとったんだって話題になっててと、と、戸浦君ならもう犯人とかなんか色々分かってるんじゃないかってそもそもと、とと戸浦君が学校の中の事に関して興味なかったらこの話は無駄な時間だったねごめんよでもその動画って言うのが陸上部女子の短パンだったりランニングシャツだったりのフェチの人にはすごい反響でかなりの勢いで拡散してるからってこの話はと戸浦君には」
「大丈夫だよ。俺も自分の学校に関しては無頓着だから、こうやって教えてもらえると助かるよ。ありがとう。まあ陸上女子の格好には興味ないから、よければ官僚の続き聞かせてくれるかい?話はインテリのトップがどう考えてるかだったけ?」
「お坊ちゃんかどうかがかなり重要なんじゃないかって思うんだこんな僕だけど戦争映画見ていたりしたら戦争なんてまっぴらごめんだしどうやって日本が世界の中で・・・」
話を元に戻しせわしなく体を掻きながら話す小太り君からの情報シャワーを浴び、自分の情報との相違点を照らし合わせていく守人だが、次第に陸上部女子盗撮の話を早く生徒会長へ知らせた方が良いのではないかと思いが膨らんでいく。
「そうだ、話しながらでいいからさ、俺、最新のパソコンが見たかったんだ。いかない?」
小さく頷き、守人の斜め後ろで念仏のように情報を吐き出す小太り君を引き連れ、パソコンショップでマシンの部品スペックを調べるふりをしながら携帯を操作して、小太り君に気が付かれないように生徒会長へ盗撮の件を伝える。
肩越しからは見えない場所で連絡を終えた守人は、情報好き仲間で特別な幼馴染との大切な時間に、幼馴染の情報を使い、高校での生徒会との付き合いをねじ込むことに、守人の心は少し痛かった。
人付き合いが下手でいつも体を掻いていることで誤解される小太り君とは、車に轢かれ脳みそが出てしまって死んでいる猫を一緒に公園の木の下に埋めたことがあった。
その日は日直で帰りが遅かった守人が、道で涙を流しながら「あ、あ、」と、どうしたらいいか分からなくなっている小太り君を見つけた。
通りがかる大人は目を背け、年の近い子供たちは小太り君が猫の死骸の前で泣いている事を気持ち悪がりひどい言葉を叫びながら走り去って行った。
「一緒に埋めよう」
守人が言うと頷き、こぼれた脳みそと体を守人が、取れてしまった目玉と体を小太り君が持ち近くの公園へ持っていき埋めてあげた。
木の枝で地面を掘るのが大変なのを知っているのは守人と小太り君だけだ。
守人は心の底でつながっている友との会話に集中する事にして、その日は携帯を見る事をやめた。




