ステータス
何とか続きが書けました。
お楽しみいただければ幸いです。
「別の世界、ですか?」
「はい、私はたまに目に留まった方を別の世界、あなたには異世界という言い方のほうがなじみがありますかね。そこへ送り出したりしているのです。」
「私が目に留まった理由は?」
「あなたが神である私の予測を超えたからです。あなたにはもっと長生きできる未来があったんですよ。私は人を運命で縛るようなことはしていませんが、ある程度先を予測できます。その中で、あなたは私の予測を裏切る早さで死ぬというミラクルを起こしました」
そんなミラクルいらんわ! ……俺ってそんなに最悪の選択をしてたのか。……まーあの企業を選んだのが間違っていたんだろう。内定出るのがすごく早かったからここでいいやって妥協したのがよくなかったな。
しかし、神様に直接チャンスをもらえるとはな。これ逆にとんでもない幸運じゃないか? ……よし、気持ちを切り替えて前向きにやっていこう。異世界も何気に楽しいかもしれないし。やっぱ剣と魔法って感じの世界かな?
「そうですね。今までいた世界にはなかった魔力や魔法といったものが存在します」
「私も魔法が使えますか?」
「異世界に対応した身体になるので努力すれば使えるようになるでしょう」
よし。魔法が使えれば異世界でも何とかやっていけそうだな。
……ただ、やっぱり知らない世界だし異世界へ行くのなら何かしらボーナスが欲しい。ほら、お約束でしょ? 特殊能力とか神様の加護とか。そう思って神様を見ると、神様は何か考えだした。そして俺を見て何かひらめいたっぽい。
「わかりました。あなたには衣・食・住と異世界の知識を補うことができる能力をサービスしましょう。」
やったぜ。思ってみるもんだな。思っただけでも伝わるがお礼は言っておこう。
「ありがとうごさいます」
「いえいえ。大したものではありません。それではあなたをお送りします」
えっ、いきなり? ……そう思った途端、白い空間が眩しく光った。
眼を開けると、そこには草原が広がっていた。
「……いきなりすぎるぞ神様」
神様だから忙しかったのか、それとも会話に飽きてきたのかそれ以外の理由か、何でもいいが突然すぎるよ。だがしれっとさっきまで履いていなかった革靴を履いている。これで見た目は普通の社畜になったはずだ。ありがとう神様。
「しかしここが異世界か。……地球との違いがわからんな。植物がちょっと違うか? いや植物なんて詳しくないしやっぱりわからんな」
呟きながら周囲を見渡していると近くに道があった。
「お、これでとりあえず町か村にはたどり着けそうだ。どっちに進むかで近い遠いはあるだろうが迷子にはならないな」
さて、現在場所の状況を確認したところで今度は俺自身のことを確認しておこう。
「ふっふっふ、このセリフを恥ずかしげもなく口にできる日が来るとはな。……ステータスオープン!」
……何も起こらなかった。
「え、嘘だろ? ステータス見れなきゃもらった能力も確認できねーじゃねーか!」
いきなりのピンチ。
「言い方が違うのか? ……スキルオープン! ……ステータス発動! ステータス確認! ……強さ、素早さ確認! 、魔法発動! 、……ステータス鑑定! 、おお!!」
ついに出た、鑑定が正解か。
『種族 人間
名前 アマネ ジョウ
年齢 15歳
特殊能力 レストラン
鑑定』
……思ってたより項目少ないな。っていうか年齢15歳? 俺今年で26だったんだけど。
……改めて体を見てみるが、よくわからない。スーツ着てるからほぼ見えんし。それに俺は15歳の時にすでに175センチ超えててそこから身長伸びてないからな。これも転生サービスか? ……あ、26の体のままだとすでに内臓とかがボロボロだったとかそんな感じか? なんせ過労死だからな。いろんなところに異常があったのかもしれん。神様が健康だった時の状態まで戻してくれたのかもな。神様の心配りがありがたい。
さて、残るは特殊応力だが、一つは鑑定。これは今まさに使っている。だが思ったよりしょぼい気がする。鑑定の能力をさらに鑑定できるか? おーできた。
『鑑定:鑑定ができる』
……そのままじゃね? ……ウィキさんの下位互換っぽいな。いやあきらめるのはまだ早い。もう一つの特殊能力レストランを鑑定だ。
『レストラン:別空間にレストランを創造する空間魔法。魔力を消費せずに使用可能』
おお? ちょっとはましな説明がある。魔力を消費しないらしいし、とりあえず使ってみるか。レストラン創造っと。
目の前にドアが出てきた。……俺このドア知ってるな。まあ能力を見たときからそうじゃないかと思ってたけど。よし、入るか。
「お邪魔します」
念のためドアを開けて声をかけてから入る。返事はなかった。そりゃそうか。
ドアの中は俺が思った通りの内装だった。……つまり俺が働いていたファミレスだ。いや俺が働いていた店よりきれいだな。開店したばかりのようにすべてのものが新品だ。120人くらい入る客席には当然誰もいない。レジの横にはお菓子が並んでいる。このお菓子の売り上げも地味に大事なのだ。ラムネ菓子を開封して食べてみる。
「うん。普通のラムネだ」
ラムネを食べつつ窓の外を見る。真っ暗で外は何も見えない。
「レストランの外には空間がないのかもな。……まあわざわざ窓を割ってまで検証する必要はないだろう」
ラムネをスーツのポケットに入れて店の奥へと進んでいく。
「やっぱり新しいだけで間取りとか備品とかは同じだな。照明も点いてるし、電気が普通に使えてるな。」
冷蔵庫を開けて中身を確認する。涼しい。やっぱり電化製品は問題なく使えるようだ。
「食材も発注したものが届いたばかりのような充実ぶりだな。一人ではとても食べきれないな」
当然だ。例えば生卵とか200個以上ある。一か月傷まないと仮定して一日6個だ。……案外いけそうな気がする。
店舗の中をすべて見回って休憩室の椅子に座って休む。結果として常温の食在庫も冷凍庫も食材が十分にあった。仕込みや解凍までばっちりの、いつでも開店できます状態だ。
「冷蔵庫の食材は、野菜とかいくつかの食材が食べきる前に傷みそうだが、それ以外は大丈夫そうだ。数か月は食事の心配はいらないな。」
野菜がなくても人は生きていけるさ。……いけるよね?
どこで区切ろうか迷ったんですが、とりあえずここまでで投稿しました。